有料

生徒に徹底して関わる 校内教育支援センター 文科省、6000校に新設へ 居場所つくり個々に指導


生徒に徹底して関わる 校内教育支援センター 文科省、6000校に新設へ 居場所つくり個々に指導 塩町中のスペシャルサポートルームで、タブレットを使って自分の学級の授業を受ける女子生徒
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2022年度の文部科学省の調査で不登校の小中学生数が30万人に迫り、不登校対策は教育現場の大きな課題に。教室に行きづらくなった児童・生徒が、空き教室などで専任教員らのサポートを受けられる「校内教育支援センター」の設置が、急ピッチで進んでいる。
 文科省は同センターを6千校に新設するため、23年度補正予算に29億円を計上した。有識者会議の報告書は、同センターの取り組みを「不登校になる前の支援策の一つ」と評価。文科省担当者は「各自治体に設置を促している」と話している。
 6月中旬、広島県三次市立塩町中学校の「スペシャルサポートルーム(SSR)」を訪ねると、入り口に三つの言葉「のびのび」「しっかり」「気長に」が掲げられていた。「ここをどんな雰囲気にしたいか、生徒と話し合って選んだ」と担当の教諭、沖山輝美さん。
 24年度は2年生の女子生徒2人が通う。2人がタブレットで映像を見ながら、各学級の授業に参加する間、沖山さんは近くの自席で待機。授業が終わると声をかけ、生徒は笑顔を見せていた。
 塩町中のSSRは21年度から。当初の担当教諭、梨木巌雄さんは、小学2年生の1年間学校に行けず、勉強が分からなくなったという生徒に、小2以降の計算、漢字ドリルで学び直しを指導した。生徒とぶつかることもあったが「本気なんだな、というのはあの子たちも分かってくれていたと思う」。
 「個々の生徒に関わりきる、SSRはそれが大事」と沖山さんは語る。校内の会議で報告するなどして、学校全体でSSRの取り組みを共有した。保護者とも連携を深め、1人も取りこぼさず進路を決められたという。
 福島市の市立中2校で6年間、SSRを担当し、今は同市の夜間中学で教える教諭、山田光裕さん。校内にフリースクールを設けた横浜市の公立中を17年に視察し、ノウハウを持ち帰った。まずは生徒が安心できる居場所をつくり、勉強はそれから。焦りは禁物という。
 夜間中学の同僚はSSR未経験者ばかり。だが夜間での学び直しに関わった経験は「(昼間の中学に戻った時)不登校の子どもたちの学習支援にも絶対に役立つ」。山田さんは力を込めていた。