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いごこち 最優秀・上原美春(泊高通信課程2年) イレギュラーだからこそ<第66回県高校定通制・通信制生徒生活体験発表大会>上


いごこち 最優秀・上原美春(泊高通信課程2年) イレギュラーだからこそ<第66回県高校定通制・通信制生徒生活体験発表大会>上 イメージ
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 第66回県高校定時制通信制生徒生活体験発表大会が8日に沖縄市で開かれ、生徒らが学校生活を通じ感じたことなどを紹介した。上位入賞した3人の作品を紹介する。

 みなさんは「寄り添う」とはどういうことか考えたことがありますか。学友がいつもより力ない、そんな時「大丈夫?なにがあったの?どうしたの?」と声をかけること、または「頑張れ」と励まし鼓舞し続けることでしょうか。では、あなた自身が落ち込んでいる時、誰かに「寄り添われた」と感じる瞬間はいつどのようにして訪れるのでしょうか。

 私の通う泊高校通信制のクラスメイトは皆異なる生活背景を持ち、通信制を選択した理由や学業と並行している事もそれぞれ。自分とは全く異なる人生を生きる彼らと過ごす学校生活はとても刺激的なものとなっています。ただ、文科省が発表している我が国の高等学校全日制・定時制への進学率が94%を超える現在、私たちが所謂(いわゆる)“イレギュラー“である通信制高校を選んだ核心には、1つ共通する点が存在していると思います。それは、やはり私たちが社会にとって“イレギュラー”な存在であったことでしょう。

 今日社会では、多様性の重要さが叫ばれつつあり、差別視も特別視もしないノーマライゼーションの考え方がトレンドです。ところが未だに少数派、イレギュラーとされる側の人々への冷ややかな意見があることも否めません。かつて私もそうであった不登校や、かなり歳を若くして子供を持つ選択をすること、高校中退、または一度高校進学をしないという決断をしていることなど、一度社会の「当たり前」から外れたことのある私たちイレギュラーはこれまで沢山の批判の目を気にして生きてきました。しかし私は、2年目になる学校生活のなかで私たちには誰よりも長けた力が秘められていると感じています。それは、「寄り添う心」「ホスピタリティ」です。ホスピタリティとは、辞書によくおもてなしとして訳される言葉ですが、私の好きな訳は「深い思いやり」「心がそばにある感覚」というものです。

 なんだかやる気が出ず母に言われるがままイヤイヤ登校した1年生のある日。あからさまに無気力で、時間が過ぎるのだけを待っていた私に対して級友たちは無理に声を掛けてこようとはせず、なにがあったのか聞き出そうとすることも、励ますこともありませんでした。ただいつも通りの会話の後、「今日ほんとは学校嫌だったんだよね」と話した私を、彼らは「だと思ったよ!」「あるよね、そういう日」なんてあっけらかんと笑ってくれたのです。「学校へ行く」という当たり前が出来なかったイレギュラーなその日の私の緊張、自責や悔しさの感情が、どれほど彼らのいつも通りに救われたか。それから何度も同じようなことがありました。私は友人たちのこの行動こそ「寄り添い」「ホスピタリティ」そのものだと感じます。

 あの時の自分にこうしてほしかった、とか、あの時こうされて自分は救われた、とか、私たちはイレギュラーだったからこそ他者の痛みに敏感であれるし、痛みを抱える他者のあるがままを受け入れ、接することが出来ると思うのです。そしてその接し方は必ずしも手を差し伸べることだけではないと思います。見守ったり、あえていつも通りだったり、助けたいと思っている相手の心の深い部分まで汲みとって行うものであること、相手が葛藤した末に着地できる居場所を用意して待っていられることこそが正に真の寄り添いであり、ホスピタリティなのではないかと私は今考えています。

 さて、私は保育士になるため、現在平日3日、保育助手のアルバイトをしています。子供たちと過ごす時間はとても有意義で、実務経験で得られる糧の大きさにこれも通信制高校だからできる事だなと感じさせられる日々です。併せて、昨年チャイルド心理カウンセラーの資格を取得しました。また、聾者(ろうしゃ)であり手話話者のご両親を持つ園児が入園してきたため、この子とよりスムーズに関われたらと今年の春からは手話を学んでいます。赤ちゃんの頃から私たちがされてきた声での言葉掛けと同じように、両親の愛を手話によって伝えられてきただろうこの子がもし心になにか抱えた時、私のした手話によってそれが少しでも軽くなれば、その可能性を少しでも大きくできるなら、葛藤を抜ける糸口になるなら、そのための努力は厭(いと)わずにいようと思います。

 不登校だった時、自分にはなれないだろうと半分諦めかけていた女子高生になることができて2年。今日に至るまで数々のホスピタリティを受け、たくさんの人に寄り添われ、喜怒哀楽のJKライフを今、思い切り楽しんでいると胸を張って言えます。誰よりも優しい、本当の意味で他者を思いやれる皆との学校生活は間違いなくここでしか得られることのなかったかけがえのない宝物と言えるでしょう。彼らからの学びは全部これからに活かしていきたい。そう思います。ホスピタリティある保育士を目指して。もがいている誰かと対峙(たいじ)した時、私の心はあなたのそばにあるよ。いつでもそう言える私を目指して。