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基地めぐる議論に感心、もやもや、それでも…東京・和光高ゼミ生、沖縄で学び考える 佐喜眞美術館も訪問


基地めぐる議論に感心、もやもや、それでも…東京・和光高ゼミ生、沖縄で学び考える 佐喜眞美術館も訪問 和光高のゼミ生に語りかける佐喜眞道夫館長
この記事を書いた人 Avatar photo 石井 恭子

 【宜野湾】和光高校(東京都町田市)で沖縄基地問題研究ゼミを受講する2年生24人が15日からフィールドワークで沖縄を訪れた。宜野湾市などの基地所在地の住民や行政の声の聞き取り、基地建設が進む名護市辺野古訪問などで多様な沖縄の断面に触れ、対話しながらそれぞれが思考を尽くした。最終日の18日、宜野湾市の佐喜眞美術館を訪れ、丸木位里・俊夫妻の「沖縄戦の図」「喜屋武岬」「久米島の虐殺」などが静かに展示された部屋で、佐喜眞道夫館長の話を聞いた。

 広く調査と学習をしながら、米軍基地問題の賛否を判断する前に、考えることから始めることがゼミの趣旨という。赤城貴紀教諭は「平和学習実施の難しさを感じながらではあるが、自分たちの足で歩いて考え、いろいろな気持ちに出合ってもらって、また人生のどこかで沖縄を見た、沖縄に来た時に学び直すきっかけにしてほしい」と語る。

佐喜真美術館を訪れた和光高校基地問題研究ゼミの生徒ら=18日、宜野湾市の佐喜真美術館

 佐喜眞館長は、広島の原爆から沖縄戦へとたどり着いた丸木夫妻の画業を紹介しながら、「戦争を理解することは、社会を理解すること」と語り始めた。日本の戦争は空襲の被害で語られることが多いが、「沖縄戦の地上戦から学ぶ必要がある」と強調した。天皇を神とあがめた時代、中国などでの侵略行為、いざ沖縄で戦争が始まれば日本軍は住民を守らなかったことなどを説明。3年に及ぶロシアのウクライナ侵攻など現代の戦争に引きつけ、アメリカや北大西洋条約機構(NATO)のウクライナ支援もひもときながら、「核兵器を使ったら互いに収拾がつかない。そんなことをどう考えるかというのが、沖縄戦を考えると見えてくるのではないでしょうか」と語りかけた。

 佐喜眞美術館は2度目の訪問だという澤宜杜さん(17)は語った。宜野湾市内で、基地の危険性は分かるが世の中には「必要」との大学生の声を聞いて得心したり、辺野古移設への中学生グループの賛否が拮抗(きっこう)した意見を聞いて感心したり。辺野古のキャンプ・シュワブゲート前では、抗議者の前に並ぶ「ある意味、誰かに雇われているだけ」と感じた警備員の姿もとても気になったそう。
 濃密な日程に連日「心のもやもやばかりが募った」と振り返る。世界の情勢から基地が必要だという気持ちも分かる。そんなこんなの上で「理想論かもしれないけど抑止力は成り立たない。1回武器を捨てて、というか軍縮してハッピーにいきましょうという気持ち。日本という国は戦争をするように進んでいるみたいですね」。惑い悩みながら、この世界を思い続けていく。 (石井恭子)