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映画 内外映画祭で沖縄に注目<2023年県内年末回顧>


映画 内外映画祭で沖縄に注目<2023年県内年末回顧> 県内で初開催された沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル=11月25日、那覇市の桜坂劇場
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 2023年は(も)県内外で大小さまざまな映画祭―沖縄NICE映画祭(1月)、沖縄国際映画祭(4月)、世界のウチナーンチュの日映画祭(10月)、ねりま沖縄映画祭(10、11月)、沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル(11月)、名桜やんばる映画祭(11月)など―が開催された。毎年多くの沖縄関連映画が制作され劇場公開されてはいるが、映画祭と銘打つことで沖縄/映画に注目が集まり、集中的に鑑賞したり制作者の話を聞けたりする貴重な機会が提供される。これらの映画祭で上映された作品や劇場公開された作品のいくつかを振り返る。

 まず、やんばるやコザ、さらには鶴見を舞台にした地域密着・発信型作品に勢いがあった。宜野座村が舞台の「ウムイ 芸能の村」は昨年末東京ドキュメンタリー映画祭でグランプリを受賞し、海外の映画祭でも上映された。名護市が舞台の「HAPPY SANDWICH 幸せのサンドウィッチ」も海外の映画祭で最優秀脚本賞を受賞した。東村をPRする「陽いづる」は短編ながら聾者(ろうしゃ)の主人公の視点・聴点で物語が進行し、聴取点サウンド(主人公が聴いている音=無音)が効果的に使われている。沖縄市が舞台の「コザママ♪ 歌って!コザのママさん!!」や「なまどぅさらばんじ。今が青春」は、フィクションとドキュメンタリーの違いはあれど、どちらも音楽やパワフルな女性が描かれた元気をもらえるような作品。「なんでかね~鶴見 ガーエーにはまだ早い」は「だからよ~鶴見」の続編で、コザ出身の自分探し中の若者が鶴見でエイサーに目覚める。

 4月の映画祭で上映されたのちに劇場公開された「遠いところ」は、個人的にはふに落ちない部分があったものの、メッセージ性とインパクトの強さが観客に刺さり、連日新聞の広告欄に心を動かされた観客の反応が掲載されていた。また、本作にかかわるシンポジウムも開催され、若年妊産婦の問題啓発に一役買った。「沖縄戦の図 全14部」は丸木位里・俊夫妻の沖縄戦シリーズの全体像を知ることができる貴重な記録である。次世代への継承もテーマのようでその意図は理解できるが、作品としてのまとまりは犠牲になっているように感じた。

 そのほか、軽いタッチでユーモアを交えながら軽くはないテーマに挑んだ「沖縄カミングアウト物語」「シン・ちむどんどん」「ファニーズ」も見ごたえがあった。沖縄が舞台となり沖縄の青年が主人公の「The First Slam Dunk」は、定番の「癒しの島」表象とは一味違う秀逸さがみられた。

(名嘉山リサ 沖縄映画研究会事務局長、和光大学教員)