消費増税で沖縄県経済の先行きは? 好調な観光業に及ぼす影響とは…


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増税前最後の日曜日に、日用品などをまとめ買いする買い物客でにぎわうスーパー=9月29日、南風原町宮平のイオン南風原店

 1日に発表された日本銀行那覇支店の企業短期経済観測調査(短観)で業況DIが過去最長の30期連続でプラスを記録するなど、県経済は全体では好調を維持している。一方で、県内企業の多くを占める中小企業にとって県外企業の相次ぐ進出で競争が過当気味となり、人件費や地価の高騰による経営コストの負担もじわりと増している。そこへきての消費増税が好調な沖縄経済に影を落とすか否か。先行きの見方は専門家の間でも分かれている。

 県内では今後も、那覇空港第2滑走路や平良港、本部港のクルーズ拠点の整備などが予定され、おきぎん経済研究所の東川平信雄社長は「観光が維持されればという条件付きだが、(消費増税の)影響は限定的にとどまるだろう」と強気の見方を示す。観光客の増加が続くことで県内での消費は引き続き押し上げられると見る。

 日本銀行那覇支店の桑原康二支店長も「沖縄は最終的に消費を左右する雇用や所得が伸びている。基調は当面底堅いのではないか」と指摘する。国内景気について、製造業は輸出減の影響を受けているが非製造業は維持しているため、沖縄への国内観光も一定の水準を維持するとみる。

 過去の消費増税の際に問題となった駆け込み需要とその反動減についても、軽減税率やキャッシュレス還元などの政策により需要の平準化が図られ、増税後の買い控えは抑えられる可能性があるとみている。

 前回2014年に税率が5%から8%に上がった際にも沖縄経済は力強さを失わなかった経験が、経済界の強気の見方を後押ししている。個人消費を中心に長期にわたって落ち込みが続いた全国に比べ、沖縄は増税後の反動減の幅が小さく、回復も早かった。

 背景には外国客が著しく増加し、毎月の入域観光客数が過去最高を更新し続けるなど基幹産業の観光が好調だったことがある。全国的に数少ない人口増加地域で、観光客を含めた交流人口が多い沖縄に「内需」を求めてホテル、住宅の建設は旺盛で、小売りや外食大手の進出も相次いだ。

 人手の争奪戦に拍車が掛かり県内の雇用、所得は少しずつ上昇。こうした景気の好循環が、増税による消費への影響を限定的にとどめた。

 一方で、前回の増税時とは経済を取り巻く環境が異なることを指摘する専門家もいる。りゅうぎん総合研究所の久高豊専務は、14年と比較して海外情勢の悪化や国内経済の減速に加え、沖縄振興予算が減少しているため「(消費増税は)前回以上に影響する」と予想する。

 企業の設備投資や個人消費が控えられると、再び物価下落や賃金低下のデフレスパイラルに陥る危険性があると警告する。久高氏は「既に海外情勢を受けて国内の輸出産業は弱っている。内需は底堅いが、増税によって冷えかねない」と指摘した。

 沖縄観光総研の宮島潤一代表は、増税によって観光客の消費単価が伸びにくくなると分析。「観光は単価が高いため、その中の2%の上昇は大きい。国内客の旅行意欲が下がることもあり得る」と語り、沖縄経済をけん引する観光業の動向を注視している。
 (沖田有吾、中村優希)