子の貧困対策で6大学が研究組織 その狙いは… 沖縄大の山野良一教授に聞く


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子どもの貧困調査研究コンソーシアムの意義について語る沖縄大学の山野良一教授=9月24日、那覇市の同大

 首都大学東京や沖縄大学など国内6大学が9月、日本初の「子どもの貧困調査研究コンソーシアム」を立ち上げた。各自治体が行う子どもの貧困調査に関わった教授陣が参加し、学際的な共同研究体制を構築することで、地域の比較や証拠(エビデンス)に基づく政策立案を普及させることが目的だ。コンソーシアムに参加する沖縄大の山野良一教授に、意義や狙いを聞いた。(聞き手・稲福政俊)

 ―コンソーシアム設立の狙いを聞かせてほしい。

 「全国の自治体で子どもの貧困に関する調査が行われるようになったが、研究者が入っていない調査もある。調査会社に丸投げし、単純集計と少しのクロス集計だけで終わってしまっている自治体もある。研究者を入れることで細かく分析でき、子どもの貧困の実態がより分かるようになる」

 「研究者が関わっていない調査のデータは自治体の倉庫で眠ることになる。単純集計だけでも貴重なデータなので、研究に生かせるはずだ。コンソーシアムを組織したことで、それらのデータの受け皿ができた。今後、自治体とデータ共有に関する協定も交わす予定だ」

 ―沖縄県は研究者を入れて詳細な調査を進めている。

 「県が本年度実施している高校生調査に、沖縄大学はチームを組んで関わっている。栄養学、労働問題などさまざまな領域から焦点を当てることで、詳しく分析することができる」

 「栄養学の視点は特に注目したい。沖縄の平均寿命が下がっているが、現在の高齢者ではなく若い世代の健康に問題がある。専門家がいることで不健康リスクがどの年齢で影響しているのかを調べることができる。学力格差も大きな問題だが、今後は栄養の問題も重要になるだろう」

 ―コンソーシアムに参加する大学は沖縄、北海道、東京、大阪と広範囲だ。地域比較が可能になることもメリットに挙げられる。

 「地域間の比較ができるようになるのは大きい。例えば医療費の助成について、県内と県外では事情が違う。中学生まで医療費を無料にしている自治体とそうでない自治体とで、健康面でどのような違いが出るのかは、沖縄の中だけでは比較できない」

 「現在、市区町村には子どもの貧困対策に関する計画を策定する努力義務が課されている。効果的な施策を実施するためにコンソーシアムの知見が役立つはずだ」