300年前の舞台よみがえる 国立劇場おきなわ 組踊初演、野外で再現


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野外特設舞台で演じられる組踊「執心鐘入」=4日、浦添市勢理客の組踊公園

 国立劇場おきなわの研究公演「御冠船踊と組踊『執心鐘入』・『銘苅子』」が4日、浦添市の組踊公園で始まった。初日は「執心鐘入」を演じた。玉城朝薫が冊封使歓待のために創作し、1719年に初めて上演した組踊の舞台を野外に再現した。約150年前のからくり仕掛け花火「掛床」も復元し、劇場初の野外公演に訪れた459人の観客を琉球王国時代にいざなった。5日の公演は「銘苅子」を上演する。チケットは完売している。

 野外特設舞台には、通常の公演で使用する「額縁舞台」と異なり、下手後方の楽屋に向かって橋掛かりをつなぎ、舞台の四隅に柱が設けられた。

 幕開けは、当時の御冠船踊でも演じられた「入子躍」。総勢36人が打楽器の音と歌声に合わせ、風車や菊の花などの小道具を手に、輪を描きながら踊り、舞台を華やかに彩った。

 「執心鐘入」は現在の組踊の型を基本にしながら、能の「柱巻き」のような動きも取り入れた。座主に鎮められる場面では鬼女が柱にまとわりつくように苦しむ様を見せるなど、舞台構造を生かして演出された。

 最後は、高さ約3メートルの仕掛け花火が締めくくった。火花が上がった後、垂れ下がる松竹梅の掛け軸や回転する火車などの仕掛けが次々と動き出し、「天下」「太平」の文字を書いた布が現れると客席から歓声と拍手が起こった。

 舞台考証を担当した金城厚県立芸大名誉教授は「シェークスピアの演劇のように古典芸能と言っても歴史として伝えられたものと(実演家に)口頭で伝わってきたものは異なる。数年ごとに復元舞台を開催し、多くの実演家や学者が関わることで古典の世界が広がることを期待したい」と話した。舞台考証と演出、仕掛け花火の監修をした同劇場の茂木仁史調査養成課長は「300年前の舞台を前に現代の風が吹いている」と笑顔を見せた。(藤村謙吾)