被害打ち明けられず10歳で出産も 性暴力被害、10代以下、20代が圧倒的多く 医師「自分守る大切さ教えて」


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
性暴力被害者への支援を話し合った県医師会主催の懇談会=9月28日、那覇市のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城

 性暴力被害者の支援を考える懇談会が9月28日、沖縄県那覇市のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城であり、被害者支援に関わる医師らが、特に多い若年被害者の心理を踏まえた支援の在り方や、県の性暴力被害者ワンストップ支援センターの実情を報告した。県医師会が主催した。

 基調講演では、武蔵野大学人間科学部長で日本トラウマティック・ストレス学会理事の小西聖子さんが、ワンストップ支援センターと連携して被害者の外来診療を行う精神科医の立場から「周囲のサポートがあれば、被害後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)になりにくい」と寄り添う人の重要性を強調した。

 続いて県産婦人科医会理事で県立中部病院の橋口幹夫副院長が、今年8月に病院拠点型として開設されたワンストップ支援センターについて報告した。病院拠点型では医療と心理、両方の支援を1カ所で行うことができ、県センターでは24時間365日の対応を実現させた。橋口氏はセンターの相談体制や、警察などへの同行支援、被害者の診察料が助成される制度などを説明した。

橋口幹夫氏

 センターは実証事業として2014年から相談を受けてきた。その実績と、中部病院での性暴力被害の診療から橋口氏は「当初成人の被害を想定していたが、10代以下から20代が圧倒的に多い」と子ども・若者への被害を問題視。「年齢が低いほど被害を打ち明けるのが遅れ、10歳が出産した事例もある」と将来への影響の大きさを指摘した。

 被害後72時間以内は緊急避妊薬で妊娠を防ぐことができる。実際には受診までに数年、数十年かかる人も多い中、会場からは「72時間をどう周知できるか」との質問もあった。橋口氏は「自分の身を守る大切さを教育現場で、赤信号を渡らないのと同じレベルで教える必要がある」と答えた。

 被害者が被害を言い出せないことに対し、小西氏は「社会が被害者への偏見をなくし、被害者が被害を相談することが悪循環を断ち切る一つ」と訴えた。

<基調講演>小西聖子氏 実情知り、寄り添って

小西聖子氏

 東京都のワンストップセンターと連携し精神科の外来診療をしている。患者はほぼ全員が性暴力被害者。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症している人が多く、被害に遭いやすいのは若い人だ。被害女性30人に聞くと約3割は過去にも性被害歴があった。

 典型例を紹介する。キャバクラで働く18歳女性が仕事帰りに客に強引にタクシーに乗せられ、宿でナイフで脅されて強姦された。彼女は家庭に居場所がなく成績は不振、いじめを受けて小学校高学年から不登校。中学では家出を繰り返し、15歳ほどで暴力団に近い無職男性と同居した。DVがあり、キャバクラで働いて生活を支えていた。

 虐待、いじめ、教育の剥奪と多くの被害を受ける中で優しくしてくれる人を求めて危険な場所に行き、性暴力被害に遭う。しかしこのような被害者は「どうでもいい」と何事もなかったように回避的に考えるくせがある。何でもないように見えるため、非行としてしか捉えられず誤解される。そこに若年被害者の難しさがある。体罰のように、子どもへの暴力は大したことがないと見なす風潮も、若年者の被害につながる。

 子どもへの性暴力被害・加害は身近で起きている。減らすためには、まず実情を知ってほしい。よくないことをしている人にも事情がある。子どもの自己評価を高め、危険な場所にいる子どもを減らさなければならない。被害者には孤立が一番よくない。専門性がなくてもそばでその人のことを一緒に考える人が必要だ。