勝敗読みにくい試合多い今大会 沖尚が8度目の優勝を果たしたわけとは… 県秋季高校野球総評


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 高校野球の第69回県秋季大会は、今夏に甲子園を経験した選手がけん引する沖縄尚学が、ノーシードから2年ぶり8度目の優勝を飾った。九州大会出場は4季ぶり24度目。沖尚に敗れたものの、選手12人で準優勝し、初の九州出場を決めた八重山農林の活躍は今大会のハイライトとなった。九回2死から5点差を追い付いた決勝の粘りは観客を沸かせた。シード4校が準々決勝までに姿を消し、具志川が初の4強入り。最後まで勝敗が読みにくい試合も多く、準々決勝は3試合が1点差ゲームの白熱した内容だった。

■打撃の2校

 沖尚は上位から下位まで打線に切れ目がなく、打率は3割8分5厘。犠打や盗塁を絡めて要所で得点を重ねた。一方、試合ごとでプレーの質の浮き沈みがあり、失策やバントミスが集中する試合があった。精神面の安定が課題だ。投手陣は、夏に甲子園のマウンドに立ったエース永山蒼が球の切れや制球に苦しんだが、大湾朝日や嘉陽太一らが継投して経験を積めたことは九州への好材料になった。

 今大会、台風の目となった八重山農林の持ち味も打線だ。打率は3割4分5厘。砂川将吾や大浜圭人主将らを軸に、全6試合で44点を奪った。選手たちは「人数が少ない分、1人の打撃練習に多く時間が割ける」とポジティブだ。投手はエース親里大翔と垣本真志が打たせて取る投球で勝ち上がった。中学時代に全国大会を経験した選手が多く、大舞台にも物おじしないプレーで臨める。

■好選手の台頭

 各校とも新チームになってから間もないため、ミスの多さは否めないが、投手陣を中心に次代を担う好選手の台頭も垣間見えた。

 初の4強入りを果たした具志川の長山松ノ介投手は、長い回数の登板でも強い精神力で粘りの投球を披露。同じくベスト4の嘉手納の新垣翔也投手は、切れのある直球に緩急を付けた変化球を織り交ぜ、準々決勝で第1シード沖縄水産を完封した。沖水の最速140キロ超を誇る左腕、古波藏悠悟の今後のさらなる成長も楽しみだ。

■5年ぶりの選抜へ

 県勢は2015年に糸満が選抜大会に出場したのを最後に、春の甲子園から遠ざかる。沖尚は、延長十回の接戦を制した決勝の勝負強さを発揮し、14年に九州王者として8強入りして以来の選抜出場を目指す。離島や少ない部員数といった不利性を物ともせず準優勝した八重山農林は、勢いをそのままに全国までの階段を駆け上がれるか。選抜出場の切符を懸けた九州大会は19日、佐賀県で幕を開ける。

(上江洲真梨子、長嶺真輝)