「頂点目指す選手育てたい」 元バスケット女子日本代表の久手堅笑美さん 沖国大女子のAC就任 故郷で新たな挑戦


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ボールを使いながら、身ぶり手ぶりでプレーを教える久手堅笑美さん=3日夜、沖縄国際大体育館

 国内の第一線で培った経験を、地元沖縄にどう還元するか。その答えは、コーチだった。元女子バスケットボール日本代表の久手堅笑美さん(35)=糸満市出身=が5月から、沖縄国際大女子バスケ部のアシスタントコーチ(AC)に就任し、指導している。「沖縄の子は身体能力が高いと言われるが、なかなか全国で上に上がれない。頂点を目指す気持ちを持った選手を育てたい」。故郷の競技力向上を思い、新たな挑戦に足を踏み出している。3日夜、沖国大体育館。「自分のマークマンとボールをちゃんと見て」「待ってたらボックスアウトできないよ」―。久手堅さんの快活な声が響く。身ぶり手ぶりを交え、12人の部員に熱心に助言するACの姿があった。(長嶺真輝)

■強い“沖縄愛”

 北中城高、拓殖大を経て、2007年に女子日本リーグ(WJBL)のトヨタ自動車アンテロープスに入団した。ガードとして09―10シーズンから3季連続でスチール王を獲得し、12年度には全日本総合選手権でトヨタの初優勝に貢献。日本代表として世界選手権も経験し、17年に現役を退いた。

 「引退後もバスケに携わりたい」との熱意に加え、「県外にいる間、ずっとホームシックだった」と笑うほど、強い“沖縄愛”を自負する。「人生、直感で生きてきた。引退する時、2、3年後に沖縄へ戻ってコーチをしたいと思った」

 17―18シーズンから2季、トヨタのサポートコーチを務めた。「スタッフと選手の懸け橋としてそれぞれの視点を知り、人として成長できた」。学びを経て、今年3月に帰郷。長らく親交がある沖国大女子バスケ部の日越延利ヘッドコーチ(HC)=県バスケ協会専務=の勧めで、沖縄県トヨタグループで働きながら、同部ACを務めるようになった。インカレ出場実績もある沖国大だが、現在は九州リーグ2部。日越HCは「(久手堅さんは)多くの一流HCの下で学び、いろんな経験をしている。若い世代に夢を伝えてほしい」と期待する。

ボードを使いながら、選手にプレーの意図などを説明する久手堅笑美さん

■自信を手に

 意識するのは、課題を一つ一つクリアしていくこと。まず得点力の向上に注力し、改善が見えれば、次に失点を抑えることを考える。「結果が出ればうれしいし、自信になる」と、選手として得た実感が指導にも生きている。沖国大は昨季、6大学が総当たりで競う九州リーグで全敗したが、今季は9月15日の2戦目で福岡女学院大に89―57で大勝し、早くも白星をつかんだ。

 「笑美さんが来てから、みんなで攻守をする意識が付いた。声掛けも増えた」と変化を実感するのは、4年の外間瑞季主将(22)。10月半ばには残り3戦を控え、1、2位は1部との入れ替え戦に進める。「残り全て勝ち、1部へいきたい」と目を輝かせる。

 「完成されたチームではないので、一緒に成長を感じながらできて楽しいし、やりがいがある」とうれしそうに語る久手堅さん。今夏には国体の成年女子も指導し、活躍の場を広げている。「自分がやってきたことを生かし、しっかり結果を出したい」と新たな舞台で奮闘する。