高校を辞めないことが貧困対策になる…高校中退防止に向けて福祉と連携 〈復帰半世紀へ・展望沖縄の姿〉4


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県立真和志高校では空き教室を利用し居場所「和」を設置した後、劇的に中途退学者が減少した=9月17日、同校

 「学校に行きたいけれど体がついていかない」「息子が人間関係が苦手で引きこもりがち。どうしたらいいか分からない」。そのような内容の絶え間ない相談に対応するのは、県子ども・若者総合相談センターを運営委託する「sorae(ソラエ)」の相談員だ。0歳から39歳までの子ども・若者のさまざまな悩みに対応するワンストップ窓口として2014年10月に開所した。年間延べ5千件以上の相談がある。統括責任者の仲間玲子さんは「一人で抱え込まないで相談に来てほしい。何をしても駄目だったという子どもたちの希望のともしびになりたい」と話す。

 県は、子どもの貧困対策で教育と福祉の連携を図ってきた。那覇市でその連携がうまくいきつつある。町田主幹は「『できることなら学校に行きたい』という子どもは多い。環境が変われば子どもに意欲が出てくる」と環境に働き掛けることが有効だと指摘する。

 那覇市は同支援員以外に一括交付金を活用し、地域の熱心な人らを「教育相談支援員」として週4日、全小中学校に配置している。児童・生徒や保護者の相談支援を行い、現場の教員からも相談への要望が強いという。また、子どもに合わせた居場所や体験活動なども展開する。これら市の対策予算は一括交付金で約9500万円だ。ただ交付金がなくなっても同水準の支援を維持できるかは今後の課題だ。

 しかし県内では経済的な理由で教育を受けられない子どもは依然として後を絶たない。高校中途退学率は経済的な理由などでより増加し、2017年度は2・0%に達した。

 不登校や中途退学者を減らす対策に力を入れている県立真和志高校の黒島直人校長は「貧困の連鎖を断ち切るためには高校とつながっておくことが大事だ」と話し、高校をやめないことが貧困対策にもつながると強調する。同校は、内閣府の予算で県内に先駆け、学校の空き教室に「居場所」を設置。ピーク時に年間70人いた退学者は二十数人に大幅に減少した。

 一方、教員の間には、抜本的な改革が必要だという意見も多い。同校の教員の一人は「経済格差が教育格差につながっている。大学までの無償化と、いつでも入れる高等教育機関が必要だ」と話す。

 高校に通えなくなった子どもを3年間受け入れる03年設置の県立泊高校通信制課程内の就学支援センターは、今年4月までに3071人を受け入れた。3分の1の生徒を再就学につなげたが、育児を理由にやめてしまうケースも多いという。

 同校の外間ひろみ教諭は、他県には企業が子どもを受け入れ、子育て、学業、仕事を支援する仕組みがあるといい、そうした子どもを職場や社会全体で理解し、支援していく仕組みが必要だと指摘する。残り2年余の沖縄振興計画の集大成として子どもの貧困対策を県の最重要政策の一つに掲げる玉城県政には、貧困対策に重要な教育政策も問われている。
 (中村万里子)