日米、地元懸念と隔たり 本部港使用 「負担減」を主張、住民反発


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訓練用船舶を載せた米軍車両の本部港への進入を阻止するため、ゲート前で抗議する市民と港湾労働者=17日午後4時9分、本部町崎本部の本部港ゲート前

 米軍による本部港使用を巡って、沖縄の「負担軽減」だとして本部港の利用を当然だと捉える日米両政府と、民間港の軍事利用を警戒する県民との隔たりが浮き彫りとなっている。使用禁止を求める緊急町民集会の実行委員会(上間一弘代表)などからの要請に対し、沖縄防衛局の竹内芳寿次長らは「本部町港湾事務所と調整した」上で港を使おうとしたと強調した。これに対し要請団は「町は自粛要請している」などと反発した。

■突然の英語

 ある日、本部港内にある管理事務所の電話が鳴った。職員が対応すると、受話器の向こうの相手は早口の英語で話し始めた。日頃から外国人観光客らからの問い合わせも多く、電話を取った職員は初めは相手が米軍とは気づかなかった。話の内容から気がつき「ミリタリーか」と尋ねたという。

 町は9月11日、県に対し不要不急の米軍艦船の港利用自粛を求めるよう、文書で県に要請した。これまでに県は米軍に3度、日本政府に2度、緊急時以外は民間港を使わないよう求めてきた。

 だが10月11日、町民からの要請に防衛局は「(本部港管理事務所から)民間への影響が生じないよう朝に使用することを提案頂き、それに基づいて使おうとした」と回答した。それに対し、防衛局側の説明について、町担当者は「認識にずれがある」との見解を示す。13日には米軍と防衛局の担当者を港内に案内したが「(米軍が自粛要請に応じず)使用した場合の安全を確保するため」としており、その場でも使用自粛を求める立場を強調したという。

 要請に参加した本部町島ぐるみ会議の原田みき子氏は「(防衛局の)あたかも町と話し合ったような言い方は心外だ。地元の自粛要請を全く無視している」と憤った。

■「不快感」

 米海兵隊は9月17日、小型船舶を本部港に持ち込もうとしたが、市民らの抗議を受けて断念した。複数の関係者によると、抗議行動で港を使えなかったことに、米軍は不快感を示しているという。日米両政府は今回の本部港使用を沖縄の基地負担軽減に位置付けているためだ。

 1996年の特別行動委員会(SACO)最終報告は陸上でのパラシュート訓練を伊江島補助飛行場で実施すると定めた。嘉手納基地内での同訓練は、あくまで例外として伊江島で実施できない時に限られている。米軍としてはこれまでより大型の船舶を使うことで、波が荒れても救助船を海に出すことができる。伊江島での訓練を増やし、県民からの反発が強い嘉手納基地内での訓練を減らす狙いだ。

 米軍は日米地位協定5条で民間港の使用は認められているとの立場だ。防衛局も「米軍の権利を制約する権限はない」と言い切る。3条3項では公共の安全を考慮することが定められているが、曖昧な規定で米軍の行動を規制できていない。

 本部町民らの要請団は「負担軽減だと言うが、県民からすれば新たな拠点をつくる軍事増強だ。負担はむしろ増える」との懸念を示した。上間代表は「本部町は自然も美しく平和だ。軍事が持ち込まれるのは許せない。断固としてはねのける」と力を込めた。 (明真南斗、塚崎昇平)