挫折乗り越えアジアで起業した女性たち ビジネスと社会貢献を両立するには…


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 那覇市の県立図書館で12日に開幕したアジア女性社会起業家ネットワーク(AWSEN)サミットは、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)に沿った新しい経済の姿をアジアの交差点となる沖縄の地で考えた。日本やインドネシア、ミャンマー、ベトナムで実践する女性起業家たちが会社設立の経緯や事業にかける思いを紹介した。サミットは13日も開かれる。


子の貧困ない世界を ミャンマーでマイクロファイナンス 加藤侑子さん

加藤侑子さん

 ミャンマーで、低所得者層への小規模金融サービス「マイクロファイナンス」を展開する加藤侑子氏(MJIエンタープライズCEO)は、農村部で働く女性たちの事業拡大を支援している。

 20代の頃からアジアでのビジネス展開に関心を持ち、2013年にミャンマーに渡った。その後、16年にCEOに就任、18年には同社の発行済全株式を取得した。

 加藤氏は幼少期に父が事業に失敗し、経済的に困窮した経験を持つ。そのためお金に対して嫌悪感を持つようになり、当時の自分にとって「お金はナイフだった」と振り返る。しかし、マイクロファイナンスを通して子どもが貧困で涙することのない世界をつくることができると知った。

 加藤氏は、海外でビジネスを展開するにあたって、「ミャンマー人」というくくりで現地の人を見ないように注意している。一個人として相手をまっすぐに見ることが、信頼関係をつくる上で大切だと指摘した。


雇用創出で貧困対策 バングラデシュで革製品製造 原口瑛子さん

原口瑛子さん

 レザーバッグ製造・販売のビジネスレザーファクトリー(本社・福岡市)社長の原口瑛子氏は、バングラデシュの自社工場に約600人を雇用し、牛本革製品のブランドを通して現地の貧困問題に取り組む。

 高校時代から世界の貧困問題に関心を持ち、国際協力機構(JICA)などで経験を積み、2017年に起業した。

 人口増加で過密化するバングラデシュでは、貧困が理由で未就学児や働けない人が多い。原口氏は「字も読めず、障がいがある人は非効率と見なされ、置いてけぼりにされている」と指摘。雇用の場を創出するだけでなく、やりがいがあって安心できる環境整備にも力を入れる。従業員に1人親が多いことから、工場に託児所を設けた。

 原口氏は現地の人が安定的な収入を得られることに重きを置き、事業展開をする上で「絶対に給料を未払いにしない」と力を込めた。


投資家との出会い大切 インドネシア離島の生活雑貨販売 アザリア・アユミンティアスさん

アザリア・アユミンティアスさん

 インドネシア出身のアザリア・アユミンティアス氏は、高校時代の同級生3人で手作り生活雑貨の製造・販売を手掛けるDuAnyam(ドゥアニアム)を設立した。インドネシアの離島など地方の公衆衛生や生活向上を目的に、地域の伝統的な織物文化や技術を海外市場に送り出している。

 アユミンティアス氏は米ハーバード大の修士課程で公衆衛生を学び、女性や子どもの貧困・健康問題に関心を持った。起業について「技術を持った女性を活用して、社会的に影響を与えたかった」と話す。

 2014年の創業後、千人の織り手の収入を約40%向上させることを実現し、バッグや財布など毎月3千点以上の商品が市場に出回る。

 アユミンティアス氏は事業展開を成功させるために「運命的なインベスター(投資家)に出会うことが大切」と話す。理念に共感して後押ししてくれる人に会うため、「自分が何をしているのかを明確に、より多くの人に伝えることが大切だ」と強調した。