幕引きしたい県、引き延ばす自民… どうなる?玉城知事会食問題


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 玉城デニー知事が選挙中から公約に掲げ肝いりで始まった「万国津梁(しんりょう)会議」を巡り、県議会9月定例会で県政野党の自民党から疑惑が投げ掛けられた。会議の設置・運営を支援する業務を県から受託する事業者と、玉城知事が正式な契約前日に会食していたためだ。10日の定例会見で知事が謝罪するなどして県は幕引きを図ったが、自民は来年6月に予定される県議選を見据えて追及を引き延ばしたい考えだ。15日の定例会最終日を前に問題を振り返る。

 発端は、会食に同席した県職員がその場で撮影された記念写真をSNS(会員制交流サイト)に投稿したことだ。9月30日の県議会一般質問で、島袋大氏(自民)が取り上げた。

 会食には玉城知事のほか、万国津梁会議の設置支援業務を担う、山形県の一般社団法人の代表と職員、同会議の委員を務める教授2人、県職員3人が同席していた。

 県作成の仕様書によると、委託する同会議の設置支援業務は(1)会議の運営(2)会議に関する情報収集・資料作成(3)議事録作成(4)委員への報酬・旅費支払い(5)会議でのお茶準備―など。人選などは県が担うため含まれていない。

 県は4月12日、この業務の企画提案の公募を始めた。4月17日の説明会には6事業者が参加したが、5月10日の締め切りまでに応募したのは、山形県の一般社団法人を中心とした4社でつくる共同企業体のみ。審査を経て5月17日にこの共同企業体への委託が内定した。

 会食が正式な契約日の前日だったことから、野党は連日、県職員の倫理規定に抵触するのではないかと追及した。県は規定に照らしても私的会合であれば問題ないと説明した。倫理規定は特別職である知事には適用されないが、玉城知事は10日の会見で「襟を正して公務への信頼を回復する」として、自身も一般職員と同じように倫理規定に沿って行動する考えを示した。

 一方、与党からも玉城知事の対応については、「後手に回っている」「脇が甘い」などと不満の声が上がった。初期の段階で説明責任を果たし、自身の「不注意」(玉城知事)に言及しておけば、騒動は早めに収束したとの見方が大勢だ。

 自民は説明責任が十分に果たされていないとの立場から、一般質問が終わった後も各委員会でこの問題を取り上げた。その中で玉城知事ではなく、同席していた事業者の沖縄事業所長や県職員の問題に追及の矛先を向けた。答弁する県側に対して執拗(しつよう)に氏名を公表するよう迫るなど「個人攻撃」とも取れる場面もあった。

 問題の焦点は、金銭の受け渡しや口利きがあったかどうか。玉城知事は会食の経費を「割り勘で支払った」と説明している。また、会食の後で委託業者が選ばれたなら公平性が問われるが、今回の場合、会食時には既に委託は決定しており、契約書を交わす手続きが残されていただけだった。玉城知事は事業を委託していることは知らなかったとして便宜供与の可能性を否定している。
 (明真南斗)