【識者評論】「市民目線で善悪判断を」井寺美穂熊本県立大准教授(行政学)玉城知事会食問題


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 公務員倫理に関する条例や規定の対象は自治体ごとに異なるが、資格任用の一般職員とは異なり知事は選挙で選出されるため、職員倫理というより政治倫理の対象となるのではないか。職員倫理であれ政治倫理であれ、社会から求められる規範であり、倫理的に行動するためには市民目線で自己の行動の善悪を判断することが求められる。

 職員倫理の場合、公務員は全体の奉仕者として市民との信託関係の下、公益を追求する責務を担っている。多くの自治体では信託関係を崩壊させるような職員不祥事を背景に「職務に関する公正さの確保」や「不祥事の防止」「信頼の回復」を目的に、倫理条例や規定が制定されている。

 ルール(倫理規定)に違反しないことは大変大事なことだが、定立化された行為規範は、職員に求められる行動を一般化したものにすぎない。そのため、単にルールを守れば倫理的である、市民の信頼に応えているとする見方は誤っているのかもしれない。

 一般化された価値をいかに自分の内面で深め、主体的に物事を判断し、その結果について市民や議会など周囲が満足して、初めて倫理的行動と評価されるのではないか。周囲が満足しない場合には自己の行動の正当性を合理的に説明する必要がある。
 (井寺美穂氏 熊本県立大准教授 行政学)