米国が中距離ミサイルを沖縄など日本に配備することを計画していることが明らかになった。その日ロ関係への影響や、経済交流に向けた沖縄の役割などについて、ロシア有力紙コメルサントの海外部オブザーバーで、テレビでコメンテーターとしても活躍しているセルゲイ・ストローカン氏に話を聞いた。
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―中距離核戦力(INF)廃棄条約が破棄されて以降の世界情勢の変化をどうみるか。
「全世界的に不安定をもたらす。この状況で一番損するのは日本、特に沖縄だ。なぜならロシアも対抗措置を取らざるを得ない。例えばミサイルを撃つ指示を出したとする。第三国に対しても必ず報復するが、ミサイルが配備されている所も我々の対抗措置に含まざるを得ない」
「日ロ関係について言うと、新型ミサイル配備計画によって関係正常化の期待感はほぼなくなった。今のところ、安倍晋三首相はプーチン大統領に積極的にアプローチしているが、プーチン大統領は最近距離を置いたかのような立場を取っている。プーチン大統領は安倍首相に安全保障面の確約がほしいのだ」
「例えば北方四島には米軍基地を造ることはないと。安倍首相は口頭で我々は友達だからたぶんそれはないだろうと言っているが、プーチン大統領にとっては不十分なため書面での確約を求めている。しかし安倍首相は約束できない。日米安保条約があるからだ」
「現在、多くの日本人はなぜロシアは最近消極的か、なぜ平和条約にサインしないのかと考えているだろう。ロシアにとっては今、四島問題の解決で安全保障面はすごく悪くならないかという心配が非常に大きい。しかし日本は確約できない。今でも日本、特に沖縄に大きい米軍基地がある。それに追加される形で新型ミサイルが配備されたら日ロ関係はさらに悪化する」
―沖縄の辺野古新基地についてプーチン大統領は言及しているが、今の辺野古新基地建設も日ロ関係を悪化させているか。
「辺野古はまったく新しい軍事基地になるので、日ロ関係の将来を暗くするだけだ。今、日ロ関係は葬儀状態だ」
―プーチン大統領は辺野古問題をどうみているか。
「間違いなく否定的だ」
―北方領土問題の次の焦点は。
「残念ながら四島問題を解決するチャンスをみんな流した」
―これから解決はないのか。
「少なくとも近い将来、数年間にわたって忘れてもいいと思う」
―一番の理由は日米同盟か。
「それだけではない。安倍首相は少し焦ったと思う。彼は特に今年か昨年に『もうそろそろロシアと解決する』などといろんな発言をした。彼はもちろん、いいことを望んで発表したと思うが、ロシアでその発表を見た多くの人々が反対し、反対運動はだいぶ高まった」
「現在、プーチン大統領の支持率も下がっている。ロシアで多方面で反対運動が高まっている。プーチン大統領にとってはロシアの領土を譲ったという批判の余地を相手に与えることはできない。やはりプーチン大統領の支持率が一番高い時に解決すべきだった。今のところ、場合によってはロシアの新しい大統領を待たないといけないかもしれない」
―沖縄の可能性は。
「プーチン大統領はこれからの経済はアジア向きだという方針だ。ロシアにとっては関係国の取引先は中国だけではないことを見せることがすごく大事だ。先日ウラジオストクで開かれた東洋経済フォーラムの出席者で一番の目玉はインドの首相だった。だからロシアにとっては中国へのいい意味でのけん制、バランスを取ることは大事なので、インドなど他のアジア諸国といい関係をつくることで中国との関係でもう少しバランスを持たせたい。その過程で沖縄の役割はかなり期待できる」
―具体的には。
「沖縄の人々がロシアに来るなどして何か沖縄のプレゼンス(存在)をロシアで確保できれば、ロシアにとっては、すごくいいことだ。ロシアの東アジア重視という政策は中国だけではなく、インドも対象になるし沖縄も期待できる。中国のプレゼンスは大きすぎる」
(聞き手 新垣毅)