刺しゅうは人生そのもの 84歳の女性が特養ホームで作品展


社会
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自身が作った刺しゅう作品に囲まれ笑顔を見せる又吉良子さん=9月20日、宜野湾市伊佐の愛誠園

 【宜野湾】「刺しゅうに囲まれ最高です」。8月下旬から9月末にかけて、宜野湾市伊佐にある特別養護老人ホーム・愛誠園が、入所者の又吉良子さん(84)による刺しゅう作品で彩られた。クッションやタペストリー、テーブルクロス、傘に絵画まで数は50点以上に上る。ほかの入所者やデイサービス利用者から大好評で、又吉さんはうれしそうに笑顔を見せる。

 又吉さんの作品は、ヨーロッパの刺しゅうを基に何百もの配色や刺し方(ステッチ)を駆使する「戸塚刺しゅう」だ。ミシンなどの機械は使用せず、一つ一つ全て手縫い。横180センチ、縦90センチのタペストリーに刺しゅうを施すのに約半年かかるなど「忍耐がいる」(又吉さん)作業となる。

又吉良子さんの刺しゅう作品

 又吉さんが刺しゅうを始めたのは約55年前。沖縄に来た戸塚刺しゅうの先生に師事した。色彩の豊かさなどに魅了され、朝から晩まで「夢中になってやった」。好きな花々や、街中にある看板などの色は全て「とても勉強になる」と言い、全国各地の刺しゅう展にも足しげく通った。

 これまで作った数は分からないほどで、県内や台湾で作品展もやってきた。昨年11月から入所した愛誠園の職員から打診を受け、展示に至った。作品を見た人から「どうやって作ったの」「習いたい」などと又吉さんに話し掛け、交流を深める場ともなった。

 自身の作品に囲まれながら又吉さんは「刺しゅうは人生そのもの」と話す。縫った刺しゅうの数ほど又吉さんのこれまでの歩みが詰まっていた。

(金良孝矢)