民意伝達も詰め甘く 辺野古見直し肯定意見なく 玉城デニー知事、米連邦議員と面談


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インディアナ州選出のトッド・ヤング上院議員(左から4人目)に辺野古新基地建設に反対する沖縄の民意などを伝える玉城デニー知事(同5人目)=16日、ワシントン市内(沖縄県提供)

 就任後、2度目の訪米となる玉城デニー知事は16日、米連邦議会の議員事務所でトッド・ヤング上院議員やブライアン・マスト下院議員ら3議員と面談したほか、米議会調査局の分析官と意見交換した。しかし最大の焦点となる米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画については、議員らから計画見直しを肯定する発言はなかった。玉城知事は2月の県民投票で示された辺野古反対の民意や、辺野古新基地の埋め立て予定地に存在する軟弱地盤の問題を示し「熱心に聞いていた」と強調。過剰な基地負担の現状や新たに発覚した軟弱地盤、活断層の問題などを直接訴えた。

 2020会計年度(19年10月~20年9月)の国防計画や予算などの大枠を決める国防権限法案は現在、両院協議会で審議しており、在沖海兵隊の分散配備計画の再調査を義務付けた上院案の条文が残るかは現段階で不明だ。

 13年12月に当時の仲井真弘多知事が辺野古新基地建設に伴う埋め立て承認申請に署名して以降、米国内で沖縄の基地問題への関心は低くなりつつある。しかし国防権限法の成立前に「辺野古新基地建設反対」の民意を示したことで、米議会や会計検査院などを通じて日米両政府に計画見直しを迫りたい玉城県政の目標に向け一歩前進したが、知事は在沖海兵隊の分散配備の再調査を義務付けた上院案を残すことや、条項に辺野古見直しを追加することは求めておらず、詰めの甘さもみられた。

米議会調査局の分析官らと意見交換する玉城デニー知事(左から5人目、沖縄県提供)

「反応はあった」

 上院の重鎮らが事務所を構える議会棟「ラッセルビルディング」。玉城知事は16日午前、県がチャーターしたバスで到着すると、ワシントン事務所の職員ら随行の職員とプロの通訳官を伴って雨が降る中、足早に建物に入った。

 「『やっぱり沖縄では反対は強いのか』というような反応はあった」。玉城知事は面談した議員らに2月の県民投票の結果を伝えると、関心を示す人もいたという。メモを取りながら玉城知事の話に聞き入る議員もいたという。

 ただ、ヤング上院議員らは、在沖米軍をはじめとするアジア太平洋地域の米軍の分散配備を再調査することを義務付けた上院案については言及せず、上下両院の協議に今後どのように影響を及ぼすことができるかは不透明だ。

求められるパイプ

 上院軍事委員会が在沖米軍の分散移転の再調査などを盛り込んだ背景には、選挙区に米軍施設を誘致することで、米国の貿易赤字や財政難のために沈下する地域経済を再び活性化させる可能性への期待がある。

 共和党の重鎮で、上院軍事委員会の主要委員の秘書官は、国防権限法案の取りまとめが重要な課題との認識を示しつつ、本紙の取材に対し「中国や北朝鮮の問題もあるので米軍基地は重要だ」と指摘。その上で「沖縄の人が米軍基地の課題に懸念を示すのは理解できる」と述べた。

 米議会で在沖米軍の分散配備計画が議論されることを好機と捉える玉城県政。今後は、県のワシントン事務所などを通して沖縄の過重負担の問題を示しつつ、選挙区に米軍施設を誘致したい議員らと適時意見交換ができるパイプを早急につくり、連携を深めていけるかが課題となりそうだ。
 (松堂秀樹)