米連邦議員、辺野古移設反対に理解示すも… 沖縄県、日本政府の〝ロビー活動〟に警戒 玉城知事訪米の成果とは


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 玉城デニー知事が14~19日の日程で訪米し、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設反対の民意と建設現場で発覚した軟弱地盤や活断層などの問題を、政府関係者や連邦議会議員、一般市民に伝えた。ワシントンで面談した議員の中には「自分で調査したい」と辺野古移設問題に関心を示す議員もいたといい、「無謀な計画は見直すべきだと誠実に伝えたかった」という当初の訪米目的は達成した形だ。

就任後2回目の訪米を振り返り「辺野古新基地建設の問題点を直接伝え、見直しを要請したことを受け止めてもらった」と意義を語る玉城デニー知事=18日、ワシントン市内

 米国務省、国防総省の担当者との面談では改めて移設計画見直しを否定されたが、国防予算の権限を握る上下両院の軍事委員会の議員らとの面談では、県民投票で示された民意や工事に係る問題を英訳した冊子で説明。「手応えを感じた」(玉城知事)と一定の理解は得ており、辺野古移設の見直しを含む米軍基地の負担軽減の実現に向け、県と連携する議員が出てくることに期待も感じさせた。

 米議会では過去に普天間移設計画が大きな焦点になったことがある。2011年に上院軍事委員会のレビン委員長(当時)と、筆頭理事のマケイン氏(同)が移設計画見直しを国防総省に突き付けた。

 実現の見通しがないまま日本政府が進展を約束し続ける移設計画は「日米同盟の足かせ」と呼ばれ、米議会でも疑問の声が上がっていた。重鎮たちが不透明な予算や実現可能性などに業を煮やし、計画の見直しを迫ると、日米両政府に激震が走った。だが、日本政府の行動は早かった。政治家や米大使館側が議員らに接触し「移設費用は日本が負担する」と繰り返し説明し、マケイン氏を翻意させた。

 今回の訪米で県は、11月中旬にも成立するとみられる国防権限法案に関わる議員を中心に、議会への情報提供に特に注力。レビン氏やマケイン氏のように、議会は過去に「外圧」として日米両政府に見直しを迫った事実があり、県も過去の経緯を意識している。

 県側にとって最大の懸案材料となりそうなのが日本政府だ。知事との会談で辺野古移設の問題点や沖縄の民意について熱心に聞き入る議員もいたが、玉城知事は「先方からの要望もある」と発言者を明らかにしていない。発言者を特定することで、その議員が日本政府による説得工作の対象となってしまうことへの懸念があるとみられる。

 関係者によると、日本政府も知事訪米に関心を示しており、前回同様「アメリカにマイナスになることはない」と大使館などを通じて米議会内で“ロビー活動”を展開し、玉城県政の成果の芽を摘んでくる可能性が高い。

 「来年以降もアプローチできる感触はあった」と意欲を見せる玉城知事。とはいえ各国大使の豪邸が立ち並ぶワシントン北西部に大使館と大使公邸を構える日本政府とは、予算規模も人数も圧倒的な差がある。自身の代理として県ワシントン事務所長らに今回面談した議員や補佐官らと適時連絡を取り合わせるほか、上下両院の軍事委員長やトランプ大統領に近い議員と接触を図るなど、県のワシントンでの存在感をさらに高める必要がありそうだ。

(松堂秀樹)