「太陽にほえろ!」が人生を決めた 安里秀明警部が務める全国に2人しかいない警察庁の指導官とは…


社会
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「捜査用似顔絵講習会」で若手警官らを指導する安里秀明警部(右)=9日、県警本部

 「画力より情報を引き出す力が大事」。全国で2人しかいない捜査用似顔絵の「警察庁指定広域技能指導官」が沖縄県警にいる。刑事部・鑑識課の安里秀明警部(58)だ。県内のみならず北は北海道、南は九州まで全国津々浦々を駆け回り、似顔絵技術の普及に奔走している。これまでに少なくとも千人以上に似顔絵の技術を教えてきた。

 夢は「美術の先生になること」だった安里警部。しかし志望の大学に受からず、その時テレビ番組で見た刑事ドラマ「太陽にほえろ!」が人生を決めた。「憧れだよね」。警察官を目指そうと決意した。

 捜査用似顔絵は鑑識課の捜査方法の一つ。2018年、県警では安里警部らによる198件の似顔絵が作成され、16件が事件解決につながった。19年は9月末現在で105件のうち6件が解決につながっている。安里警部は34年間の警察官人生で約3600枚の似顔絵を描いてきた。そのうち、殺人事件などの凶悪事件をはじめとする100件以上を解決へと導いた。

 9日、県警本部で「捜査用似顔絵講習会」が開かれた。「画力よりいかに目撃者から情報を引き出すか」「特徴を捉えて描く」。安里警部は若手警察官らに似顔絵の技術だけでなく心得も伝授した。

 努力と勉強を重ね、独学で心理学や解剖学などを学び自作のマニュアルを作成した安里警部。それが警視庁の目に止まった。警視庁はマニュアルを基に、全国で初の似顔絵捜査の部署を創設。その一方で、今でもえん罪などの端緒とならぬよう似顔絵を描く時は「プレッシャーを感じる」という。独自の道を切り開いてきた真の“似顔絵捜査官”はこれからも、拳銃や警棒ではなく「2B鉛筆」を手に後進育成に励んでいく。
 (照屋大哲)