700万円の支払いも… 心臓移植手術に必要な費用は? 県外の滞在費など沖縄特有の「医療格差」が深刻


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 心臓移植手術を受ける県内の患者の経済的な負担を軽くするため、発足した心臓移植の患者と家族を支える「芭蕉の会」。患者とつぶさに接する医療従事者と、患者自身が共に手を取って沖縄の医療格差の解消に向けて一歩を踏み出した。

 日本は極端なドナー不足が指摘されており、心臓移植を受ける人数は年間50人程度だ。一方、2018年時点で心臓移植の待機患者は700人以上おり、移植登録から実際に心臓移植を受けるまで約3年の期間を要するといわれる。統計上、県内の予想末期心不全患者は約160人いると想定される。

 そのため、琉球大医学部は移植を受けるまでの治療として心臓のポンプ機能を代行する補助人工心臓治療に取り組み、これまでに芭蕉の会会長の安里猛さん(67)を含めて3人が同大と連携する病院で心臓移植を受けた。

 2011年に心筋梗塞を発症した安里さんは、12年に移植の登録をした。琉球大医学部付属病院で補助人工心臓治療を受けた後、14年に県外の病院で移植手術を受けた。

 移植の時期が近づいた際、県外の病院近くで生活を始め、手術までに約5カ月間、移植後の通院のために約1年間滞在した。約1年半の間、住居費や家族の航空運賃など、さまざまな費用がかかったと振り返る。安里さんは「弱い者を救える沖縄であってほしいと思っている。幅広い支援を求めて活動していきたい」と語る。

 心臓移植の指定病院のうち、東京大医学部で手術を受ける場合を想定すると、同大のある文京区の家賃相場は月約12万円でその額を1年以上負担する必要が出てくる。さらに、臓器搬送にかかる費用は療養費払いとして一時的に患者が負担することになるため、沖縄の患者が心臓移植を受ける場合、700万円以上必要となるとの試算もある。

 患者が経済的に困窮している実態に触れ、琉球大医学部第二外科の國吉幸男教授、稲福斉講師らが会の設立をけん引した。國吉教授は「東京の人も沖縄の人も同じ憲法の下で平等でなければならない」と命を救うための責務と会設立の意義を訴えた。(池田哲平)