子ども3人に1人が貧困の沖縄 支援すべき子どもを発見するのに必要なこととは… 〈復帰半世紀へ・展望沖縄の姿〉9


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
子どもたちが無料で自由に利用できる児童館。経済的に厳しい家庭の事情を抱える子どもの発見機能にもなっている=うるま市の市みどり町児童センター

 子どもの貧困率29・9%―。2016年1月、衝撃的な調査結果が明らかになった。県内の子どもの約3人に1人が貧困状態に置かれており、その割合は全国の16・3%(12年調査)の約1・8倍。具体的な数値として初めて示され、その深刻さが浮き彫りになった。

 12年度の沖縄21世紀ビジョン基本計画(沖縄振興計画)開始から中盤となる5年目に差し掛かる中、早期解決が求められる問題として浮上した子どもの貧困問題。県は調査結果を受け、貧困の状況にある子どもの健全育成が図られる環境の整備や教育機会の確保を目的に、同年3月に「県子どもの貧困対策計画」を策定した。対策を進めるため、30億円の「県子どもの貧困対策推進基金」を創設。振興計画でも重要課題に位置付け、本格的な対策に乗り出した。

 国や県、市町村だけでなく民間を巻き込んだ「沖縄子どもの未来県民会議」も設立され、取り組みが加速した。官民連携の成果が目に見える形で表れたのが食事を提供する「子ども食堂」や学習支援などを行う「子どもの居場所」設置の広がりだった。食堂を含む「子どもの居場所」は調査開始から2年で100カ所を超え、県子ども未来政策課によると、18年度末には26市町村・139カ所に増えた。

 0~18歳までの子どもが自由に無料で利用できる児童館は代表的な「子どもの居場所」だ。うるま市みどり町児童センターもその一つ。放課後になると、施設内は児童たちでいっぱいになる。その中に家庭の事情が厳しいだろう子どもたちも紛れており、支援すべき子どもに気付くことができるという。

 児童館は午後6時閉館だが、子ども貧困対策事業を受けて週2回、午後8時半まで利用時間を延ばした。中学生の来館が増えたことで、これまでの運用では支援できていなかった子たちの姿も見えるようになった。

 対策を進めるために必要な居場所の在り方について山城康代館長は「まずは支援すべき子どもを見つける児童館のような発見機能が重要になってくる」とした上で、そこから個別に子どもや家庭に合わせた次の居場所につなぐ必要性を挙げた。

 ただ、それには発見機能の居場所の配置が根本的に足りていない。子どもの居場所は拡充されてきたものの、県内小学校区で見ると、約7割が1カ所も設置されていないのが現状という。

 子どもにとって安心できる場として有効性が認知されてきた「子どもの居場所」。発見機能として数を確保するだけでなく、今後は継続して見守ることができる機能など運用の在り方を広げていくことも課題として見えてきた。

(謝花史哲)