すれ違う日米同盟 米軍、日本の中止要請無視 パラシュート降下訓練


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記者団の取材に答える河野太郎防衛相=29日夜、防衛省

 米軍が29日、今年4度目となる嘉手納基地内でのパラシュート降下訓練を実施した。河野太郎防衛相は十分な説明がないとして米軍の対応を厳しく批判したが、中止の要請は無視され、訓練は強行された。米軍の思うままに訓練に関する日米合意が解釈され、日本側がその運用を規制できない現実を突き付けられた。日米同盟の考え方を巡る双方のすれ違いも露呈した。

 「決して受け入れることはできない。SACO合意違反と言わざるを得ない」。河野氏は訓練実施に先立つ29日午前の閣議後会見でこう述べ、強い不快感を示した。嘉手納基地内での訓練には地元の強い反発があることから、日米同盟の維持強化の観点からも「ゆゆしき事態と言わざるを得ない」とまで語った。

 嘉手納基地内でのパラシュート降下訓練は今年に入り相次ぎ、河野氏は外相時代から国会で度々この問題を追及され、悪天候などに限って嘉手納基地内での実施が認められる「例外的な場合」が「拡大解釈することは許されるべきではない」などと強調してきた。

 28日から29日にかけて、防衛省は米軍や在日米大使館、米国防総省などさまざまなルートを通じて中止を申し入れた。河野氏は同省を通じてエスパー米国防長官にも懸念を伝えたが、在日米軍は29日午後5時過ぎ、ツイッターで予定通り訓練を実施すると表明。程なくして、嘉手納基地上空のMC130から兵士が次々と飛び立った。

 県も29日午前、米軍に対して嘉手納基地内での訓練中止を求めた。だが米軍は「日米合同委員会の合意事項で、訓練を行える規定になっている」と説明し、その上でこう付け加えた。「訓練は日米同盟に寄与する。そうでなければ行わない」

 一方の河野氏は、訓練が実際に行われたことを受けて「極めて日米同盟の維持強化に反するような事案と言わざるを得ない」と断じた。パラシュート降下訓練の強行は、日米同盟や日米合意に関する双方の認識に溝が横たわっていることを浮き彫りにした。

(當山幸都)