「ショック…」「沖縄の心の支え失った」 地域住民、燃え上がる首里城にぼうぜん 夜明け前の空を白煙が覆い、サイレン響き渡る


この記事を書いた人 問山栄恵
燃え上がる首里城の消火活動を見守る地域住民たち=31日午前5時半ごろ、那覇市の龍潭

 31日未明、首里城からの激しい炎とともに上がった白煙が夜明け前の那覇市首里金城町の上空を覆った。炎は首里城北側にある尚巴志王時代につくられた池「龍潭」の水面をオレンジ色に染めた。火の粉は住宅地上空で舞り、次々と落ちていった。那覇市消防をはじめ近隣自治体の消防本部から消防車両が集結し、周辺にはサイレンの音が鳴り響き、防災無線からは周囲住民に避難を呼び掛けるアナウンスが流れていた。駆け付けた地域住民たちは燃え上がる首里城を驚愕(きょうがく)しながら消火活動を見守っていた。

 午前5時過ぎ、龍潭のほとりに40代女性が立ちすくんでいた。女性はむせび泣き「ショックだ…」と声を詰まらせた。午前2時半ごろからサイレンの音が鳴り響いていたが、外に出て確認するまで首里城が燃えているとは思いもしなかった。首里城は小学校に通う子どもの毎日の送り迎えで目にしてきた。「せっかくここまで復元されたのに。子どもたちへの影響も心配だ」と絞り出すように語った。

 真っ赤に燃え上がり、パチパチと音を立てて、目の前で崩れていく首里城を見て、那覇市首里真和志町の石原キヌ子さん(82)は両手で顔を覆った。首里で生まれ育ち、戦後、焼け野原から復興していく様子も見てきた。「沖縄の象徴。宝だった。経済的な損失だけでなく、沖縄の心の支えを失った」。

 3年ほど前まで首里城で清掃の仕事をしていたという那覇市首里山川町の仲地キミ子さん(78)は「こんな姿になるなんて」と目頭を押さえた。年々増える観光客を目にして、首里城を誇りに思ってきた。「再建まで20年以上かかった。再び首里城の姿を見ることができるのか。これからの沖縄観光はどうなるのか」とだけ語り、言葉を失っていた。

 池之端交差点付近で火災の様子を見ていた県立芸術大に通う山本奏美さん(21)はサイレンの音を聞いて現場近くに駆けつけた。「本当に悲しい」と語り、燃える首里城をぼうぜんと見詰めた。【琉球新報電子版】