「家に燃え移るのでは」 首里城炎上に住民恐怖 涙を流す高校生も


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火災現場付近から遠ざかって登校するよう児童や保護者を誘導する学校関係者=31日午前8時46分、那覇市首里の城西小学校付近(ジャン松元撮影)

 未明から燃え続けた首里城の周辺では、風に乗って火の粉が舞った。那覇市や那覇署の呼び掛けに応じて自宅から避難した住民らは「家に燃え移るのではと恐ろしかった」と不安そうな表情を浮かべた。近くの学校は登校時間を遅らせるなど対応に追われ、中にはショックで学校を休んだ児童もいた。

 「サイレンの音が鳴り響き、外に出たら焦げたようなにおいがした。何事かと思って首里城の方を見ると火の手が上がっていた」。首里城のすぐ南に位置する首里金城町の女性(34)は避難先の石嶺公民館で、火災発生から約1時間後の異変を振り返った。

 アパート1階の自宅から出ると、警察官が慌てて駆け寄り「延焼の恐れがある」と告げられたという。同じアパートの2階に住む会社員女性(46)も避難し「まるで花火の下にいるようだった。家まで燃えてしまうかと思った」と語った。

 首里城の北西に隣接する城西小学校は児童の安全を考えて、通常午前8時15分までの登校時間を同9時に遅らせたほか、予定していた授業参観を中止に。臨時の朝会を開き、児童を励ますなどした。ただショックを受けた児童もおり、城西小は1人、城南小も3人が欠席した。

 登校前に首里城を眺めていた城西小6年の喜久里至道さん(12)=那覇市松島=は「落ち込んで何も考えられなかった。登下校で首里城が見えないのは悲しい」と肩を落とした。一緒にいた祖母の美代さん(78)=首里山川町=は「ニュースを見て孫のことが気になり、学校まで来た。子どもたちが安全に通学できるようになってほしい」と話した。

 首里高校も生徒の安全面に配慮して早朝講座を取りやめ、生徒には登校が遅れても遅刻扱いにはしないと伝えた。下地正樹教頭によると欠席者はいなかったというが、涙を流す生徒の姿もあったという。

 現場近くの龍潭(りゅうたん)通りでは未明から、火災の様子を見ようと訪れた人でごった返した。