首里城の焼失で修学旅行はどうなる?観光業に打撃… ツアー変更の対応に追われる


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 2018年度に280万人が訪れるなど沖縄を代表する観光施設である首里城の焼失は、沖縄振興をけん引する県内観光産業にとっても深刻な打撃となる。1992年の正殿復元から27年、観光や修学旅行の必須のコースとして、年間の入域客数が1千万人に迫るまでに成長した沖縄観光に欠かせない中核的な役割を果たしてきた。関係者は「メインの観光資源がなくなることで観光、経済への影響が懸念される」と危機感をあらわにしている。

 首里城が火災に見舞われた31日は、首里城を観光コースに盛り込んでいる旅行各社が朝からツアー日程やコースの変更に追われるなど、観光業界に混乱が広がった。斎場御嶽や識名園など周辺施設では、首里城観光からの振替先として問い合わせの件数が増えている。

ツアー行程変更

 旅行会社のジャンボツアーズの定期観光バス「ヒップホップバス」には首里城を中心にしたコースがあるが、火災の影響で首里城から斎場御嶽に急きょ変更した。同社は今後、首里城の代替として識名園や福州園、斎場御嶽を候補に挙げるが、首里城火災でそのほかの観光施設の混雑や交通規制を懸念する。

 これからのシーズンは修学旅行の受け入れもピークを迎える。離島の小学校の修学旅行を受け入れるリウボウ旅行サービスは、首里城観光のコースについて今後は学校側と調整しながら対応を決めるという。

 観光バス事業を展開している県バス協会の加盟各社も、事業への影響を懸念する。小川吾吉会長は「各社は観光コースを変更せざるを得ない状況だ。観光客の期待に応えられるよう、沖縄の魅力を発信できるバスツアーの在り方を考えたい」と力を込めた。

動画、パンフに登場

 南城市の斎場御嶽では営業開始の午前9時以降、旅行社などから首里城からのツアー日程変更の問い合わせが30件以上あった。週末だけで既に約10件の振り替えを受け入れる。担当者は「人数制限をしていないので受け入れ体制を整えて、首里城のフォローができれば」と話した。

 県文化観光スポーツ部でも、首里城が関連する事業に影響が出ている。首里城をはじめとする「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」は、2020年で世界遺産に登録されてから20年の節目を迎える。関連事業は今年から始まっており、10月30日には動画サイトに世界遺産のプロモーション動画が掲載されたところだった。

 パンフレットも沖縄観光情報センターなどに置いていたが首里城の写真が大きく掲載されているため、内容の変更について今後協議が必要としている。

 また県のスポーツ振興課は、東京オリンピック聖火リレーの県内出発地が首里城公園であることから、ルート変更の可能性がないのかなど東京五輪・パラリンピック組織委員会との確認や調整に追われた。

 緊急帰国した玉城デニー知事は、日韓関係の悪化に伴う観光客減少を受けた訪韓ツアーの最中だった。沖縄観光は正念場を迎えている。
 (中村優希)