子どもの居場所、流行ではなく文化に 子の貧困で九弁連シンポ 解決のためにいますべきことは…


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
九州弁護士会連合会の第72回定期大会シンポジウムのパネルディスカッションで議論する登壇者ら=10月25日、那覇市の沖縄ハーバービューホテル

 九州弁護士会連合会が10月25日、那覇市の沖縄ハーバービューホテルで開いた第72回定期大会シンポジウム「子どもの貧困のない社会を目指して~すべての子どもが健やかに成長し発達する権利を実現するために」では、子どもの権利を奪う貧困の現実や課題について議論した。沖縄大学の山野良一教授が基調講演し、パネルディスカッションには県子ども生活福祉部子ども未来政策課事業推進班の井上満男班長、NPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆいの金城隆一代表理事、しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄の秋吉晴子代表が登壇した。沖縄弁護士会子どもの権利に関する特別委員会の横江崇委員長がコーディネーターを務めた。詳しい内容を紹介する。

 井上氏 県では2015年度、子どもの貧困率調査、子どもの実態調査をして対策計画を策定し、16年度から本格的な対策を始めた。国は21年までの沖縄子どもの貧困緊急対策事業を始め、食事や学習支援などの居場所の運営、支援員配置、県立高校内の居場所運営などを続けている。県は30億円の県子どもの貧困対策推進基金を作り、就学援助の充実、放課後児童クラブの利用料軽減など事業を実施し、子どもと保護者の生活実態を把握する実態調査事業も続けている。

 横江氏 成果は。

 井上氏 経済状況による子どもの自己肯定感に差がなくなった。今後も所得向上へ企業を後押ししたい。

 金城氏 不登校や引きこもりの若者支援をしている。引きこもりの6割は不登校経験者。経済的にしんどい世帯の子どもは不登校率が高く、中学で不登校だった子は高校でも不登校や中退のリスクが高い。高校中退後、35%はニート化し、就職した65%も労働搾取されやすい。

 厳しい環境に育ち、安心・安全が壊されている子たちは「やる気のない子」に見える。徹底的に受け入れ、自己肯定感が高まって初めて夢ができる。

 日本は学校教育以外の若者施策に投資をしてこなかった。貧困や不登校は社会構造で生み出されるのに家庭の責任にされる。子どもの権利は保護者だけでなく大人全体で守らなければならない。投資すれば子どもは社会の人材になる。

 横江氏 居場所を考える中で必要なことは。

 金城氏 流行で終わらせず文化にすることだ。

 秋吉氏 シングルマザーの支援活動をしている。沖縄は収入が低い上、養育費の受け取りも全国より低く7人に1人。受け取り経験がない人が7割だ。1人親世帯の命綱ともいえる児童扶養手当は2人目以降の増額、支給回数の増加など、長年訴えてきた運動の成果で改善もしたが、長い目で見るとどんどん削られている。学歴と収入は関連するため子どもの進学を願うが教育費負担は大きい。1人親世帯の子の進学は非常に厳しい。キャリアの中断、非正規労働など、子どもを持つことによる社会的不利を除くことは、就業支援よりも貧困対策に効果的だと言われる。制度や法律を変え、子どもと笑顔で過ごせる家庭を一つでも多く、共に作ってほしい。

 横江氏 1人親支援に特に必要なものは。

 秋吉氏 最低賃金の引き上げと、教育の完全無償化だ。子どもがいる家庭に現金給付してほしい。

 横江氏 補足は。

 山野氏 沖縄は待機児童が深刻で、特に低所得層で子どもを預けられず働けない人が多い。特に低所得層の子どもの発達には保育が有効とのエビデンスがある。親の就労、子どもの発達する権利のためにも待機児童の解決が重要だ。