首里城火災 捜査関係者「今は闇の中」 電気系設備から出火の可能性も証拠収集が難航 原因断定に至かは不透明


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燃え盛る首里城正殿=10月31日午前4時25分、那覇市首里当蔵町(梅田正覚撮影)

 那覇市首里当蔵町の首里城正殿など主要7棟が焼失した10月31日未明の火災が発生してから7日で1週間がたった。県警と那覇市消防局の実況見分で火元は正殿1階北東とほぼ断定した。周辺にあった「分電盤」などの電気系統設備から出火した可能性が高いとみられている。ただ、木造建築の正殿はほぼ焼け尽くされており証拠収集は難航している。最終的に原因断定に至るのかも不透明な状況だ。

 捜査関係者は「本当に今は闇の中だ。鉄筋コンクリート造りなら焼けても形が残り、骨組みも落ちない。しかし、木造建築は燃えて全てが崩れる。配線も燃えている。苦しい闘いだ」と険しい表情を見せた。

 火災は31日午前2時34分に正殿内の煙などを感知するセンサーが反応し、発生が確認された。県消防相互応援協定に基づき、近隣の8消防、車両18台、総勢74人が消火活動に参加し、約11時間後の午後1時半に鎮火した。

 県警と消防、総務省消防研究センター職員などが2日から現場で実況見分を始めたが、4日までは正殿の瓦や灰を手作業で一つ一つ確認しながら運ぶ作業に終始した。本格的な実況見分に入ったのは5日のことだ。市消防局の関係者は「砂の中から金を探すようなイメージで疑わしい物を探している」と表現する。

 関係者によると、正殿周辺に設置された防犯カメラの数は50台以上ある。県警はカメラの解析を続けるが、現時点では外部から何者かが侵入して放火した可能性は低い。

 分電盤は各階や部屋に電気を配分する設備で、隣には映像送受信などをするハブ(中継機)があった。正殿1階と野外の防犯カメラ4台はハブとつながっていたが、同2時41分ごろに一斉に電源喪失した。その時間帯に周辺の電気系統設備が火災に包まれた可能性がある。しかし、捜査関係者によると、分電盤そのものにショート痕はなく、そこから出火した可能性は低いという。

 日本防火技術者協会理事の鈴木弘昭氏は「あれだけの火事だ。奇跡的に証拠が燃え残っていて、相当な目利きな人がこれを分析する。これくらいしないと原因特定は難しいのではないか」と指摘した。
 (梅田正覚)