1週間で投球500球まで 沖縄県内の野球関係者は制限をどうみる?


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 高校野球が“変革”を迫られている。日本高野連が設置した有識者会議は、1週間で投手が投げられる球数を500球までに制限する答申案をまとめた。選手を守ることが目的だが、強豪校や小規模校など、学校ごとに投手の陣容はさまざまで、影響の違いも考えられる。試合の公正が保てるのか、との指摘もある。県内の球児や指導者らは制限の動きをどう受け止めているのだろうか。

■影響は限定的か

 「1週間で500球」という制限は、県内大会にどれほど影響するか。具体例でひもとく。

 今秋季大会で部員12人で準優勝した八重山農林のエース親里大翔。3回戦から準々決勝までの6日間、3試合での球数は223球だった。今夏の選手権沖縄大会決勝で229球を投じた興南の宮城大弥でさえ、準々決勝から決勝までの3試合(7日間)で490球と、500球に達しなかった。

 県内大会の試合日は土日が主。1週間で500球に達するケースは多くはなさそうだ。複数の投手のいるチームが増え、影響は限定的だと捉える向きもある。

 一方、九州大会や甲子園では勝ち上がれば日程がタイトになり「すぐ制限がかかるのではないか」との声も聞かれる。昨夏の全国選手権で2回戦から準々決勝までの5試合(7日間)を一人で投げきった金足農(秋田)の吉田輝星(日本ハム)は、592球を投じた。ただ昨年の春夏の甲子園で、1週間で500球を超えたのは吉田だけだった。

■制限と投手人数

 選手を守るため、制限がより厳しくなる可能性もある。県内の関係者の思いはさまざまだ。

 多様な競技への人気の分散もあり、競技人口は減少傾向だ。日本高野連によると、高校の部員数は2014年の17万312人をピークに5年連続減少し、19年5月末は14万3867人。

 県内も例外ではない。関係者の一人は「ぎりぎりの部員数で大会に出る学校も多くなってきた」と語る。一人エースに頼るチームに適用されれば、勝敗に直結する可能性もあり「全国出場をうかがう学校が制度によって固定化されることにならないか」と懸念する。

 制限導入を評価する声もある。部員数の少ない高校の監督は「選手の将来を考えると必要なことだ」と言い切る。一人のけがで大会出場さえ危うくなるため、日頃の練習から投球数には気を配ってきた。ただ「高校で野球をやめる子、進学後も続ける子とそれぞれ。続投を訴えられたら判断は難しい」と複雑そうだ。木製バットの使用督励など球数以外の方策を求める声も聞かれた。

■競技性への影響

 球児はどう考えるか。ある投手は「大事な試合に出られなくなったらと考えると、(制限は)ない方がいいのかな」と困惑気味。

 内野手の選手は「相手投手にたくさん投げさせる攻撃が多くなるかもしれない」との戦略も思い浮かべる。ファウルで粘る、いわゆる待球作戦だが、これが広まれば試合の公正さに疑問符が付きそうだ。小規模校の監督は「それで競技性が保てるのか」と首をかしげた。
 (上江洲真梨子)