沖縄へ所有権返還必要 再建は国際法基づく権利 島袋純氏(琉球大教授)〈首里城再建 識者の見方〉


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 首里城は、世界遺産としての登録がその礎部分だけであったとしても、検証に検証を重ね、忠実に再現された正殿などの建造物もまた世界的な文化財として極めて重要な価値を持つ。

 首里城は誰のものか。琉球王国には、古代天皇制の律令が適用されていない。明治国家の建設に当たって「版籍奉還」、つまり天皇の土地と民(版籍)を天皇に返す(奉還)などできない。明治政府は、いったん天皇に返された土地の所有権を整理し、多くの国民に近代所有権を設定して与え、残された多くの土地を国有地とした。

 近代化の第一歩とはいえ、天皇の名の下に実現できた他府県と異なり、琉球王国の土地の明治政府による国有化は正当性を持たない。明治に強制的に開城され、日本軍に占拠され、そのまま国の所有権が設定された首里城然(しか)り。土地に対しては当然ながら再建予定の建造物も、要求があるならば、その所有は沖縄の人々に返還すべきだと考える。

 その根拠は、自らの文化を享受し、継承し、発展させる権利は、極めて重要な人権であることに求められる。日本は、人種差別撤廃条約および国際自由権規約を批准しており、それを直接法源として、権利保障を実現しなければならない。

 これらの条約に基づいて国連人種差別撤廃委員会が日本政府に対して、沖縄に対する国策について、人種差別撤廃条約の解釈の仕方を伝えている。また、国連自由権規約委員会は同じく日本政府に、自由権規約の国際的な基準を沖縄に対して導入するように改善要求を出している。

 これら委員会が言及している人種差別撤廃条約第5条と自由権規約第27条は、いずれも先住の人民としての自己決定の権利を保障することを要求している。その具体的な法としての根拠を、先住民に関する国連宣言(2007年国連総会決議)の条文を用いて言及し、特に経済的、文化的および社会的発展に関する権利の特段の保障を要求している。

 つまり、国際法に基づけば、首里城の再建は、文化的な権利の実現として、沖縄の人々の集合的な権利、人民の自己決定の権利として促進されなければならないことになり、また、文化的多様性の尊重の義務と文化的な権利の促進義務が日本政府にも課せられている、と考えるべきであろう。首里城再建の手続き、資金、財政、所有権などの問題は、このような国際的な基準を基に解決されていくべきであろう。