「饒波の龕」市文化財に 豊見城、「印部石」4基も


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修復された「饒波の龕」=12日、豊見城市歴史民俗資料展示室

 【豊見城】1967年ごろまで、葬儀の際に死者を墓まで運ぶために使われた字饒波の「龕(がん)」が約4年に及ぶ修復を終え、1日付で市指定有形民俗文化財として認定された。あわせて元文検地の際に測量に用いられた図根点(基準点)の「印部石(しるべいし)」(別名「ハル石」)4基も市指定有形文化財として指定された。指定を受け、龕と印部石を展示する企画展「豊見城市の指定文化財~饒波の龕と印部石~」が市歴史民俗資料展示室で12月28日まで開催されている。

 龕はかつて霊きゅう車のようなものとして使われており、文献などによれば約280年前には修復された龕に近いものが使われていたという。市内では嘉数・我那覇・高安・饒波・保栄茂の5字が龕を保有し、現在は高安に龕と龕屋が、保栄茂に龕屋が残っている。

 今回修復された饒波の龕は沖縄戦で一度は失われたものの、1952年に再建された。だが火葬の普及で67年ごろを最後に使われなくなり、以降は地域の健康長寿を祈願する対象として龕屋に納められていた。

 2014年に龕屋を取り壊すことが決まり、自治会から市教育委員会へ寄贈され、修復が始まった。市文化課によると、龕の修復は県内ではあまり例がないという。企画展では修復前の龕の様子や修復の工程などが紹介されている。

 市文化課の宮城良真さんは「今ではほとんど見る機会がなくなった龕を見て、地域の人が大切に残してきた歴史や文化を感じてほしい」と来館を呼び掛けた。

 企画展は午前9時から午後5時まで(月曜、祝日休館)。入場無料。

 問い合わせは市教育委員会文化課(電話)098(856)3671。