公文書偽装の可能性も 島尻消防、内部規程書き換えて証拠として県人事委に提出 パワハラ懲戒処分問題


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幹部の独断で書き換えられる前の「島尻消防警防規程」(左)と書き換え後の規程

 【南部】島尻消防組合消防本部の男性司令補(50)が職場内での「パワハラ」などを理由に懲戒処分を受け、その後県人事委員会が処分の取り消しを命じた問題で、出動時の行動などを定めた内部規程(きてい)の一部が、幹部の独断で書き換えられていたことが27日、分かった。島尻消防は書き換え後の規程を、男性司令補の処分を不服とする審査請求に対する証拠として県人事委に提出した。男性司令補は「規程の書き換えが処分決定に影響を与えた」と主張している。

 男性の代理人を務める仲宗根忠真弁護士は「書き換えは本来、市長決裁が必要なはずだ。公文書偽造の可能性が高い」と指摘。県人事委の裁決は書き換えに言及していないが、島尻消防の不適切な対応を示すものと言えそうだ。

 島尻消防幹部による書き換えがあったのは「消防部隊の編成」や「出動計画」などが定められた「島尻消防警防規程」の一部。屋比久学消防司令長によると、「規程は消防内のマニュアルで、市長決裁は必要ない」として、2013年に当時の消防長が決裁した。一方で管理者の瑞慶覧長敏南城市長は「書き換えの指示はしていない」とした。

 記述が変更されたのは第4章「隊長等の編成」部分で、「中隊に中隊長を置く、中隊長は署長とする」との記述が「中隊に中隊長を置く、中隊長は署長(警備課長)とする」と書き換えられた。さらに「中隊長は、小隊長及び分隊長又は機関員を編成し命ずる」という記述が「小隊長は、分隊長及び機関員を編成し命ずる」と変わっている。

 また、書き換え前後で施行日も異なっている。当初の規程には「この訓令は、平成25年4月1日から施行する」と記載されているが、県人事委に証拠として提出された規程には「この訓令は、平成25年9月1日から施行する」となっている。新たな規程が適用される施行日は記載されていない。掲示板に掲示するなどの告示もしておらず、規程の差し替え作業も遅れた。

 屋比久消防司令長は書き換えについて「消防長の決裁はもらっている。文書改ざんではない」と説明。新たな施行日の記述がないことや、差し替え作業が遅れたことについては「事務的なミス」と回答。書き換え前後で施行日が違っていることについては「確認する」として明言を避けた。 (嘉数陽)