移住者を呼んでも受け入れる体制ができていない…沖縄の離島が抱える悩みをどう解決するか 〈復帰半世紀へ・展望沖縄の姿〉12


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海が一望できる展望デッキへ通じる橋は台風で壊れたままになっている=10月5日、粟国村

 「行政が村のために何をやっているのか見えない。村民にお金が落ちる構造をつくらないと人は増えず、村は潤わない」。粟国村でダイビングショップを営む新城正巳さん(33)はこう指摘する。

 県企画部が国勢調査を基に作成した県人口に占める離島人口の割合は、2015年時点で8・8%となり1975年以来最低となった。粟国村は2010年から15年までの人口減少率が12・1%と、県内市町村で最も大きかった。村人口は1903年の4966人をピークに減少を続け、2019年10月31日現在で691人となっている。

 県は今年7月に発表した「沖縄21世紀ビジョン基本計画等総点検報告書(素案)」で離島の地理的特性などから「島ちゃび(離島苦)」が生まれ「雇用機会も少ないこと等」が「人口流出や高齢化の要因となっている」と認識し、改善のため産業や観光振興、移住促進などを掲げている。

 粟国村はハード事業の整備によって雇用を生み、定住者や観光客を増やしたい考えで、現在、役場の新庁舎建設や港の改築工事、キャンプ場の整備などに着手している。建設業の仕事が増える見込みがある一方で、村の小さな建設業者は多額の工事の実績がないことから入札に参加できず、仕事を受注できない。村民にお金が落ちない悪循環が続いている。

 観光客や移住者の受け入れ体制にも課題は残る。県内有数のダイビングスポットで、島南西部の景勝地「マハナ岬」からは、晴れた日には沖縄本島の町並みが白い帯のように浮かび上がって見える。一方で島南東から海を一望する展望デッキに行くための橋は台風で壊れたままだ。

 「せっかくの資源が生かし切れていない」と話す新城さんは、ダイビングショップを訪れる観光客から交通便の悪さや宿泊施設の少なさについて苦情を聞くことが多いという。「せめて民宿を運営する補助などをもっと行政が率先してやってくれれば、村民が働く場所も増えて観光客も村に来やすくなる」と訴えた。

 「移住者を呼んでも受け入れる体制ができてない」と指摘するのは地域おこし協力隊で移住促進業務などに携わる松下梓子さんだ。松下さんは協力隊の任務をきっかけに17年10月に村に移住し、粟国村担当として県内外で開催される離島への移住相談会などに参加してきた。相談会では「粟国に住みたい」という声をよく聞く。

 だが、いざ村に来ると「『空き家は多いが住める家がない。働く場所もない』という声を耳にする」と言う。「『働く場所がないから起業しよう』と思っても、県や村からは起業資金の援助もない」と仕事に就くハードルの高さも指摘した。その上で「県や村は『離島に来て』という割には受け入れる側には目を配っていない。粟国だけに限らない問題だと思う」と離島が抱える課題を語った。

 人口流出が止まらない中で、いかに「島ちゃび」を克服し、離島が持つ資源に光を当てるか。離島住民の切実な声に耳を傾け、県全体の発展につなげる行政の力が問われている。

(嶋岡すみれ)