「県の信頼性が疑われる」 観光客数の集計ミスはなぜ起きた?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県が2018年度の目標に掲げていた入域観光客数1千万人の突破は、当初の発表から半年以上がたった段階で、数値を上方修正する形で実現することになった。沖縄観光の指標となる観光客数が修正される事態に、県内の観光関係者からは「統計の信頼性が失われる」と非難の声も上がる。集計ミスは、航空会社など関係機関を含めて確認作業の不足が要因となった。県はチェック体制を強化して再発防止に取り組む考えだ。

2018年度の入域観光客数の修正を発表する県文化観光スポーツ部の新垣健一部長=26日、那覇市泉崎の県庁

 県が再集計して26日に発表した18年度の観光客数は1千万4300人で、4月発表の999万9千人に5300人の上乗せとなった。全日本空輸(ANA)の伊丹―石垣線の実績が報告から漏れ、18年度の数値に反映されていなかった。

少人数で統計確認

 沖縄観光の隆盛の象徴ともいえる観光客数1千万人の大台達成にも、会見した県文化観光スポーツ部の新垣健一部長は「うれしい思いもあるが、修正での達成なので複雑な気持ちもある」と表情を曇らせた。

 観光客数の修正は県内の観光業界にも波紋を広げた。前沖縄観光コンベンションビューロー会長で、かりゆしグループオーナー会長の平良朝敬氏は「県が発表する数字の信頼性を揺るがすような大問題だ」と深刻に受け止める。

 県が発表する観光客の統計は、航空各社から提供される旅客輸送実績などを基に算出する。航空各社に実績の提出を義務付けているのではなく「協力をお願いしてもらっている」(新垣部長)という。

 集められた実績は県の担当者が集計し、担当部署の班長ら数人が確認作業を行うという。今後も統計担当の人数を増加する予定はなく、新垣部長は「少ない人数でやっている。チェックを十分にやることが重要だ」と理解を求める。

修正発表に不信感

 県が18年度の観光客数に疑問点を抱き、確認作業を始めたのは今年8月だったが、修正値の発表までに3カ月以上もかかった。県は夏場の繁忙期が重なりANAから正確な数値の報告が遅れたことなどを理由に挙げる。県内の経済関係者は「あまりにも対応が遅すぎる。観光客数の数値を使って仕事をする業者に対して不親切だ」と不満を漏らす。

 新垣部長は「県とANAのどちらか一方だけに原因があったというわけではない。航空各社には忙しい中でも正確な数字の発表をお願いし、県も確認をする必要がある」と発表の遅れを弁明した。

 沖縄ツーリストの東良和会長は観光客の人数の多寡だけでなく、宿泊者数や域内観光客数の把握など新たな指標や分析能力が重要になるとの見方を示す。東会長は「統計方法を改めて検討することで、必要な観光資源も分かってくる。何のために統計を取っているのか考えないといけない時期に来ている」と指摘した。

(平安太一、中村優希)