「廃止ありき」疑問も 石垣市自治基本条例 与党、条項の不備強調  市政野党の反発必至


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 【石垣】石垣市議会の市自治基本条例に関する調査特別委員会(友寄永三委員長、10人)が26日に同条例の廃止を求める結論を出したことで「自治体の憲法」とも呼ばれる自治基本条例が廃止される可能性が出てきた。議会からの動きで廃止されれば、全国初とみられる。与党議員だけで構成された特別委では条例への批判的な意見が大勢を占めたが、内部からも「廃止ありきだった」との声が漏れる。野党の反発も必至で、12月2日に開会する12月定例会ではこの件が大きな争点になりそうだ。

石垣市役所(資料写真)

 11月26日は5回目の特別委で各委員がそれぞれ意見を述べた。複数の委員によると、制定時に当時の与党が押し切って成立させたとの指摘や、市当局が「理念条例」との認識を示していることから、理念を拘束力のある条例で定めることへの疑問など、条例を問題視する意見が噴出したという。

 そのほか、国や県との対等関係確保という基本理念などが「(自治体は)地域における事務」などを処理すると定める地方自治法の規定に抵触するとの認識を示した上で、条例の規定を根拠とする、陸上自衛隊配備計画に関する住民投票に対し「国家の崩壊につながりかねない」との発言もあったという。

 住民登録された人以外も「市民」と定義する条項を問題視する意見もあった。一方で、委員の一人は「具体的な条項で問題視されたのは『市民』の定義ぐらいだ」と明かす。

 条例の見直しでは不十分だったのか。実際、委員会の採決で廃止に反対した公明の委員は取材に対し「市民の定義の修正で良いのではと意見した。すぐに廃止は早急すぎる」と話す。

 委員長の友寄氏は委員会で指摘された点を挙げた上で「一つ一つ直すというレベルではない」と廃止判断の正当性を強調する。ただ、他の委員からは「当初から廃止ありきの議論だったとの印象はある」と、十分な検証を経ての判断だったかどうかに疑問符を付けた。

 特別委の結論は12月定例会開会日で報告される予定だが、議会としての決議は予定してない。与党側は「まずは市当局に判断を投げる」(友寄氏)考えだ。中山義隆市長は取材に対し「まずは委員会報告を聞かないとどうするかは分からない」と述べるにとどめる。

 一方、市当局の動きや議会での議論次第では、議員による条例廃止提案の可能性も選択肢に上がる。市総務課などによると、提案者が市当局であれ議員であれ、条例廃止の議案は議会の過半数の賛成で成立する。現在の石垣市議会の構成では、議長を除いた21議席のうち、仮に公明が反対に回っても与党が過半数を占める。

 特別委の構成に加わらなかった野党の宮良操氏は「1年以上かけて市民の声を聞いて作り上げられた条例を、5回の会議で全て否定するのは非常に疑問がある。特別委での議論の中身をきちんと追及していきたい」と述べた。