新旧戦力が融合 小野伸二加入、選手に刺激<FC琉球 サッカーJ2挑戦>下


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 FC琉球のJ2初年度は、シーズン前に選手が半分ほど入れ替わり、経験豊富な選手が多く加わった。夏の移籍期間には小野伸二のほかJ1経験のある風間宏矢、複数ポジションをこなせる鳥養祐矢、U―17ブラジル代表の経験があるハモンらが加入。7月から負けが続く苦しい時期に、新旧の戦力が躍動した。

■失点の“癖”

京都との最終ホーム戦、ゴール前でパスを受けシュートを放つ上門知樹(中央)=10日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアム(新里圭蔵撮影)

 7月の岡山戦から5連敗、1勝挟んで3連敗を喫した。1―6で大敗した徳島戦(8月)は5失点がセットプレーによるものだった。負けが続くと「(練習の雰囲気は)落ちるが、そんなことはなかった」(樋口靖洋監督)。練習に加わったばかりの鳥養はがつがつと前に出て、監督よりも声を張った。小野の存在も大きく、若手は“至宝”の技術を盗もうと積極的に前に出た。

 ただ、試合では個々の選手がボールを持つ時間が増えてミスしたり、失点後にプレスの甘さが出て大量失点する“癖”につながったりしていた。ミーティングでは「全員で戦おう」と監督や選手が口々にし、失点後の共通認識を深めた。週に1回、セットプレーの対策に時間を当てると、佐々木将貴GKコーチの的確な指導もあり、セットプレーによる失点はほとんどなくなった。

■敗戦から学ぶ

 8月に19位へ転落した後、20位の鹿児島との直接対決前のミーティング。樋口監督は「敗戦から学ばないと話にならない」と語気を強めた。会場のサポーター席には「何が何でも勝て」の横断幕が掲げられていた。

 試合は、風間宏矢が1ゴール1アシストと活躍し、決勝点は上門知樹が決めて白星をつかんだ。その試合後は上原慎也がけがから復調し、上背を生かしたプレーを披露。9月の金沢戦、山形戦では同点ゴールを決めるなど、チームに勝ち点をもたらした。

 もがく期間が過ぎ始めると、個々の強さが生きた。クロス、縦パスを送り込むだけでなく両SHには突破力のある河合秀人、ハモンを起用するようになった。バイタルエリアに侵入させて一気に流れを変える。前線は新戦力の山田寛人と上門が担った。攻撃パターンはより多彩になり、ゴールシーンが増えた。10月30日、4試合を残してJ2残留が決まった。

■沖縄のために

 80失点はリーグワーストの結果で失点癖は来季への課題となった。J1ライセンスも取得し、簡単ではないが最高峰への道も開かれている。課題と収穫を得たシーズンだった。樋口監督は「攻撃的なサッカーじゃないと、県民に魅力を与えられない」とまだまだ挑戦を続けていく。

(喜屋武研伍)

最終戦を前に、最後の調整を行ったFC琉球の選手とスタッフ=23日、中城村のごさまる陸上競技場(球団提供)