首里城火災への国や県の対応は十分だったか? 所有権は移転すべきか? 沖縄県議に聞いた アンケート詳報


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 首里城火災を受けた県の対応について「評価できる」と答えたのは23人で最も多かった。「評価できない」を選んだ県議は17人だった。一方、国の対応については38人が「評価できる」を選び「評価できない」と答えた県議はいなかった。

国を「評価」38人 火災への対応

 与党の大部分は県と国双方の対応を「迅速に対応した」などと評価した。県について「復元に向けた強い思いが伝わった」などの意見があった。国の対応について、共産6人と会派おきなわの平良昭一氏は「その他」を選んだ。県の主体性や県民の思いを尊重するよう求める声が多くを占めた。

 与党で唯一、上原正次氏(おきなわ)は県の対応を評価できないと答えたが理由を記入しなかった。国の対応は評価した。赤嶺昇氏(同)は県の対応について「その他」を選び理由を記さなかった。国の対応は評価し「課題はある」と述べた。

 一括で答えた野党の自民は県の対応を評価できないと答えた。県の対応について「鎮火してから対策本部を設置したのは疑問だ」と遅さを指摘した。国の対応は「すぐに支援を表明し取り組んでいる」と評価した。

 中立の公明と維新は全員が国の対応を評価した。県への評価は分かれた。「知事発言がぶれている」などという意見が上がった。

法的課題を指摘 所有権移転

 県議に首里城の所有権移転の是非を尋ねた琉球新報のアンケートで、回答した県議45人のうち多くが「その他」と回答した。理由として「国営公園としての法令的な問題や維持管理費の問題と課題を解決することが前提だ」(崎山嗣幸氏、社民・社大・結)など、法的な課題がネックだとの見方が強い。

 一括回答した自民会派14人も「その他」とし「原因究明や再発防止を優先すべき」とした。

 「賛成」と回答したのは与党側が多かった。会派おきなわは8人中4人が賛成。玉城満氏は「本当の意味での沖縄のシンボルとすべきだ」とした。一方、「現時点での議論ではないと思う」(上原正次氏)などの理由で2人が反対とした。

 共産は6人全員が県への所有権移転に賛成した。「首里城は県民のものだ。段階的な移管も含め、将来的には県に移管すべきだ」(渡久地修氏)など、県所有が本来の在り方だとする意見が目立った。維新の當間盛夫氏は「沖縄のシンボルであれば当然」、大城憲幸氏は「所有権の議論につなげるためにも、財産も含めた県主体の再建が大事だ」と賛成した。無所属の山内末子氏は「琉球王国の歴史的遺産だ」と賛成した。

与党でも意見に違い 再建主体と予算

 首里城再建の主体や予算措置を巡り、与党内でも考え方にばらつきが見られた。

 「県」が主体的に進めるべきだとしたのは与党3会派(無所属含む25人)の11人と中立会派維新の2人。比嘉瑞己氏(共産)は「首里城は戦災復興の象徴でもあった。次世代でも沖縄の誇りになるよう県主体が望ましい」と答えた。

 一方、上原正次氏(おきなわ)は「再建には膨大な費用がかかる。国が主体で連携する仕組みづくりが必要」と主張。野党自民は「首里城は国の所有物であり、既に県から国に要請している」として国が主体となるべきだと回答した。

 「その他」の中には、県でも国でもない、官民一体での再建を望む声が多数あった。

 再建費用の在り方については「県と国の双方で負担すべきだ」との回答が最も多かった。糸洲朝則氏(公明)は「火災は県の管理責任も問われる」と指摘し「国との話し合いで役割分担すべきだ」とした。議員で唯一、「県が全額負担すべきだ」と回答した新垣光栄氏(おきなわ)は「沖縄の心をまとめ、自立するためにも県民と県が一緒になって工面すべきだ」と主張した。新垣清涼氏(おきなわ)は「国が全額負担すべきだ」と回答した。

「十分だった」はゼロ 防火体制

 焼失した首里城の防火体制については与野党に関係なく批判的な意見が相次いだ。首里城の正殿など主な建物は、防火設備としてドレンチャーや放水銃などが設置されていたが、スプリンクラーは誤作動で収蔵品を傷める懸念があったため設置されていなかった。結果的に既存設備では火災の延焼が防げなかったことで、首里城の防火体制について「十分だった」と回答した議員はゼロだった。

 「不十分だった」と回答したのは与党8人、中立会派公明4人、維新1人の計13人に上った。与党からは「余りにも消火体制が貧弱だった」(新垣光栄氏)との批判や「スプリンクラーを設置していたらと悔やまれる」(渡久地修氏)との意見が出た。さらに、「防火体制を再検討すべきだ」(金城勉氏)との意見も出た。

 「その他」と回答した議員の多くは出火原因が特定されていないことを理由に「調査が進められる中で防火体制については評価される」(大城一馬氏)などと、消防、警察による作業を見守る考えを示した。

 ※沖縄・自民は島袋大氏、中川京貴氏、照屋守之氏、具志堅透氏、山川典二氏、西銘啓史郎氏、大浜一郎氏、座喜味一幸氏、座波一氏、新垣新氏、末松文信氏、仲田弘毅氏、花城大輔氏、又吉清義氏の14人。アンケートは島袋氏が代表して回答した。