【記者解説】「住民投票つぶし」拭えず 自治条例廃止の根拠弱く 石垣市議会与党の数の力で…


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 石垣市議会の与党側が市自治基本条例の廃止条例案を議会に提出した。2日の本会議における廃止を結論付けた同条例に関する調査特別委員会の委員長報告で、「理念を条例で制定する必要がない」などの廃止の理由を挙げたが、“結論ありき”との批判は根強く、廃止の根拠の薄弱さは残ったままだ。説明不足を解消しないまま、与党側が数の力で押し切ろうとする構図が際立つ。

 16日の本会議での採決の行方は現段階で見通せないが、自治の主役である市民を置き去りにしたまま、議会が自治の理念を全否定する異例の事態が現実味を帯びてきた。

 石垣市自治基本条例は、市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の動きに合わせ注目されてきた。署名活動を展開した市民団体が、住民投票実施の根拠を同条例の規定に置くためだ。

 住民投票実施に向けて市民団体は市を提訴し、同規定の解釈も裁判所で争われている。こうした時期に廃止を強行しようとする与党側の動きは「住民投票つぶし」との印象は拭えない。

 一方で仮に廃止されても、係争中の住民投票に直接的な影響はない。与党関係者らは住民投票の動きとは別に、一部市議の思想・信条が廃止強行の流れをつくっていると指摘する。

 廃止に動く与党議員らの動機は市民第一ではなく、政治的思惑であることは明らかだ。廃止条例案の提案理由にある「(首長と議会の)二元代表制の円滑な運用には必ずしも有用な条例ではない」との文言がそれを端的に表している。

 地方自治の重要な担い手である地方議員による安易な自治理念の否定は、自らの存在意義の否定にもつながる。採決が迫る中、市民との対話や議会での与野党の議論が注目される。
 (大嶺雅俊)