「運動場の笑顔守る」「どうして私たちだけ?」 校庭に米軍ヘリ窓が落下した小学校 児童、教師が綴った思い【全文】


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米軍ヘリ窓落下事故から2年たち、子どもたちへのメッセージを群読する教師ら=13日、宜野湾市新城の普天間第二小学校

 【宜野湾】宜野湾市新城の普天間第二小学校で起きた米軍ヘリ窓落下事故から13日で2年を迎え、同小で事故を忘れないため全体集会「12・13を考える日」が開かれた。638人の全児童に向け約50人の教師らが「運動場はあなたたちの笑顔が集まる場所」「その笑顔を守りたいと強く願う」などと群読でメッセージを送った。

 集会で教師らが普天間第二小の成り立ちや事故概要をスライドで説明。窓を落としたCH53E大型輸送ヘリコプターの同型機が事故直後に学校上空を複数回旋回する様子や、事故後の運動場で避難を繰り返す児童の姿を映像で流した。窓が落ちる瞬間に児童は「おー」と驚きの声を上げた。

 運動場で体育の授業を受けていた当時4年生の國吉なぎさん(11)=6年=が作文「同じ空の下なのに」を朗読した。教師らは群読で「安心して学び、遊ぶ権利があるはずなのに」「きれいな青い空を見上げる度に悲しい顔はしたくない」「誰も傷つくことのない学校にしたい」と読み上げ、児童に誓った。

■「安心して学び、遊ぶ権利があるはずなのに」 先生たちの群読

3機編隊で学校の敷地を沿うように飛行するCH53E大型ヘリ=2018年6月

子どもたちへ

子どもたちへ

授業中、休み時間 迫ってくる音

胸が苦しくなるほどの 轟音(ごうおん)

安心して学び、遊ぶ権利が あるはずなのに

きれいな青い空を 見上げる度に 悲しい顔は したくない

空 澄み渡る 普天間第二小学校・幼稚園

日常を…普通にと願う

日常を…普通にと願う

あなたもわたしも 大切なひとり

その笑顔を守りたいと 強く 願う

安心・安全を 強く 願う

誰も傷つくことのない 学校にしたい

運動場は、あなたたちの笑顔が 集まる場所

私たちは 青空の下(もと)

途切れなく響き渡る 子どもたちの笑い声・笑顔

元気よく活動し、キラキラ輝いている姿が 大好きです

大好きです

この普天間第二小学校・幼稚園を 誇りに思い

伸び伸びと

すくすくと 育て あなたたち

未来へ向かって はばたけ 普二っ子

未来へ向かって はばたけ 普二っ子

■6年生の國吉なぎさんの作文「同じ空の下なのに」

グラウンドに落下した米軍機の窓枠=2017年12月13日(宜野湾市提供)

「また、大縄なのぉー」
 いつものように体育の授業が始まりました。
 でも、今日の授業は生涯忘れる事のない授業になってしまいました。

 皆さん覚えていますか。2年前の12月13日、私達の学校、普天間第二小学校へ、米軍ヘリの窓わくが落下したあの日を。
 あの日から私達の学校生活が大きく変わってしまった事を。

 ((ドンッ))
 今までにあびた事のない砂ぼこりの中で、
 校舎に走って!
 の先生の声。
 何が起きたのかわからないままみんなの後を追って校舎に走りました。
 
教室に入り席についたとき、校内放送で、米軍ヘリの窓わくが落下した事を初めて知りました。
 先生が
 「みんな大丈夫」
 「けがしている人はいない」
 先生のその声も聞こえなくなるぐらいクラスのみんなは大さわぎ。

 その後、30分ぐらいで全校生徒が下校になりました。
 「みんなー、外みてみて、大人の人がたくさんいるよー」
 「何してるのかなー」
 「なんか、すごい事になってる」
 お母さんがむかえに来たので、校舎の外へ。
 「こーまー、なーぎー、はなれないでよー」
 足早に車に向かいました。
 「運動場にいたの何年生ね」
 「なぎの4年生と2年生だよー」
 お母さんは、「うそでしょ」といつも以上に大きな声でさけんでいました。

事故後、グラウンドには多くの報道陣や関係者が詰めかけた=2017年12月13日

 家につくと、お父さんがテレビを見ながら
 「あいやー。明日から学校大変になるさー」と首をふっていました。

 お父さんの言葉通り、次の日から私達の学校生活は、変わってしまいました。
 びっくりするほどのカメラの数。
 マイクを向けてくるテレビ局の人。
 写真をとりまくる新聞社の記者。
 正直、なんでこんなにさわいでいるか、わからず、苦痛でした。

 しかし、何より辛かったのは、運動場が使えなくなった事です。
 「はぁー。いつになったら使えるのかなー」
 「毎日走れないなんて楽しくないよなー」
 「体育も、いつも体育館だしな」
 「周りの学校は、当たり前のように、運動場が使えるのに、なんで普二っ子だけが使えないんだろう」
 同じ空の下なのに、なんで私達だけが。
 どんなにさけんでも、届く事のない普二っ子の心のさけび。

 学校から皆の元気な声が消えそうになった時、やっと条件つきで運動場が使えるようになりました。
 ひなん所が作られ、ひなん訓練があり、毎年12月13日を考える日があります。

 あれから2年。
 今でも、「何で普二っ子だけが」の問いに、答えを見つけられずにいます。
 ただ、「米軍のヘリが運動場の上を飛んでいるから」それだけの理由ではないからです。

 皆さんは、どう思いますか。
 皆さんにも考えてもらいたくて、私は、この場に立っています。
 一人でも多くの人に考えてもらえるなら、皆の願いである平和な島「沖縄」に近づける気がするのです。
 未来の私達のために。
 未来の皆さんのために。
 同じ空の下で。

 桃原修校長は「落ちたことを皆にきちんと伝えていってほしい」と願い、「日常を…普通に…」という自作の詩を紹介した。事故翌年に赴任した桃原校長は、米軍機が飛ぶ度に避難する児童の姿に涙が出たという。「なぜ避難するの」と尋ねる児童に言葉が出なかったといい、「正解のない答えを出すしかない」と苦しい心情を明かした。

■桃原修校長の詩「日常を…普通に…」

沖縄防衛局の職員から避難指示を受け、校内に逃げ込む児童ら=2018年6月、宜野湾市新城の普天間第二小

二〇十七年 十二月十三日 午前十時八分
普天間第二小学校の運動場に 米軍機ヘリ窓枠が落ちた
その翌年 四月 わたしは ここ普天間第二小学校へ やってきた
避難する子どもたちを 目の当たりにした 涙がでた
なんとかしなくては…

休み時間 避難する 子どもたちはいう「いやだと…」
なんとかしなくては…
体育の時間 避難する 子どもたちはいう「いやだと…」
なんとかしなくては…

校長先生 「なぜ避難するの…」 と子どもが聞いた
「あぶないから…」の答えを求めているのではない と感じた
ことばがでなかった
なんとかしなくては…

普天間第二小学校は なにを求めているのか…
子どもたちは 何を求めているのか…
正解のない 答えをだすしかない
日常を… 普通に… と

青い空のした 白い雲は流れる
どんよりおもたい雲のした 雨はおちる
そんな日常で いつまでも変わらぬことがある
校庭に響きわたる 子どもたちの声は 消えることはない

でも
どうしましょう…