否決後も住民投票巡り攻防続く 石垣市自治基本条例で市議会 自民会派は新たな条例提案、そのわけとは…


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石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票実施を求める市民の署名を同市選挙管理委員会に提出する「市住民投票を求める会」のメンバーら=2018年12月、石垣市役所

 石垣市議会与党の自民会派議員らが提案した市自治基本条例の廃止条例案が、16日の市議会12月定例会最終本会議で賛成少数により否決された。廃止に関しては、市平得大俣への陸上自衛隊配備計画への賛否を問う住民投票をけん制する動きとの批判が根強かった。住民投票の請求団体が自治基本条例の規定を根拠としていたためだ。自民会派は今後、自治基本条例に代わる条例案を提出する構え。住民投票についての規定も変更したい考えだが、推進する関係者は自民会派の方針に疑問符を付ける。

 市自治基本条例28条では、有権者の4分の1超の署名で「市長は所定の手続きを経て、住民投票を実施しなければいけない」と規定する。

 有権者の3分の1超の署名を集めて請求した、陸自配備計画に関する住民投票を巡っては、請求団体の「市住民投票を求める会」が実施を求めて市を提訴し、係争中だ。このタイミングで住民投票の実施に反対する与党側が起こした条例廃止の動きに「住民投票つぶしだ」との声が実施を推進する市民らから広がった。

 実際、廃止に賛成した複数の議員は取材に「裁判が起こされるような条例は要らない」としていた。議論でも安全保障政策は「国の責任でやるもの」と陸自配備計画への賛否を問う動きを暗に批判する発言もあり、住民投票を意識していたのは間違いない。

 ただ、廃止されていたとしても、その効果は過去にさかのぼって適用されないため、訴訟中の住民投票に直接的な影響は与えない。「住民投票に反対した与党主導の条例廃止は、裁判官の心証を悪くするのではないか」(野党関係者)と、訴訟に有利に働く可能性があるとの見方もあった。

 廃止への理解が与党内でも広がらず、自民会派は新たな条例提案にかじを切る方針だ。住民投票に関しては、請求に関して議会議決の必要性を明記したり、県・国の政策に関する事項を実施対象から除外したりする考えを示す。

 住民投票を求める会弁護団事務局の安里長従氏(司法書士)は「仮に現在の4分の1以上の署名に加えて議会議決を必要とすると、地方自治法よりもハードルが上がるだけで、『法律の範囲内で』の条例制定を定める憲法94条に違反する」と指摘する。

 また、安里氏は除外規定を設ける方針について「日米安保の可否など安全保障全体に関わることならともかく、何を国策とするかは疑問だ」と指摘する。「辺野古の県民投票での『辺野古の埋め立ては国策だから(住民投票にそぐわない)』との話と同じだろう。国策だからと強行するのは民主主義とは言えず、地元として意思を表明する権利はある」と強調した。
 (大嶺雅俊)