日系移民排斥の歴史知って 映画監督の松林要樹さん ブラジル「サントス事件」を番組に 沖縄県系人が協力


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「県系人の協力がなければ番組は成立しなかった」と感謝する松林要樹さん=16日午後、那覇市の琉球新報社

 第2次世界大戦中の1943年、ブラジルのサントスに移り住んだ日系移民が強制退去させられた「サントス事件」のドキュメンタリー番組が19日午後11時から、NHK・BS1で放送される。2016年、強制退去者の名簿が見つかり、多くの沖縄県系人が含まれていた。制作した映画監督松林要樹さん(40)=西原町=は「県系人の協力がなければ番組は成立しなかった。語られてこなかった歴史を記録したもので、ぜひ見てほしい」と語った。

 サントス事件は43年7月8日、サントス港沖でドイツの潜水艦がブラジルなどの貨物船を撃沈したことを発端に、ブラジル政府が日本やドイツ、イタリアなど敵対する国の移民を強制的に退去させた事件。

 松林さんが取材を始めたのは16年6月。当初は福島県からの移民について調べていたが、同年8月にサントス事件に関する名簿を発見。記載された日系585家族のうち、少なくとも375家族は県系人だったという。

 松林さんはこの名簿をもとに、サントス移民の移住先のサンパウロで取材を敢行。県系人がサントス事件の体験者を探したり、車で現地を案内してくれたりして、25人以上から証言を聞けたという。

 サントス事件は、現地で知られてはいたものの、多くの体験者が口を閉ざしてきたことから、資料がほとんど残されていないという。松林さんは「歴史を大事にする沖縄の県民性に助けられた」とした上で「今も世界では移民が差別、排斥されている。過去を知ることで、寛容な社会の在り方を考えるきっかけにしてほしい」と述べた。