オリオン買収に期待と警戒 経済記者が振り返る2019年の沖縄経済(下)ブランド


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 2019年の沖縄経済はオリオンビール買収やセブン―イレブンの進出、サンエーパルコ西海岸シティ開業などちまたの話題をさらう大きなニュースが相次いだ。現場で取材を続ける経済記者が今年1年を振り返った。

座談会参加者
 平安太一(経済キャップ)、沖田有吾(金融・エネルギー)、外間愛也(商工労働・IT担当)、中村優希(観光担当)、石井恵理菜(農林水産担当)

オリオンビールの社長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、記者会見に臨む早瀬京鋳氏(中央)=7月22日、那覇市安里のホテルロイヤルオリオン

 中村 オリオンビールの買収は驚きのニュースだった。長年、県民のビールとして親しまれただけに、沖縄のビールとして地域密着の取り組みができるか注目したい。

 平安 買収の際は株主やOB、創業家一族など多くの関係者に会って取材を進めた。当時は外資がオリオンが所有する不動産を狙っているとの見方が強く、沖縄の企業に買収してほしかったという意見も多く聞こえた。株式売却に応じた株主の中には「外資が決めたことにあらがえない」と口にする人がいる一方で、オリオンの発展のために願いを託した人もいた。買収成立後も外資への警戒感は完全に消え去っていないと感じている。

 外間 新体制で社長に就いた早瀬京鋳氏は、7月の就任会見で「創業からのDNAは変えないのが私の使命だ」と強調した。その精神を形で示し、県民に還元できるかが大きなポイントだろう。劇的な改革が進められ、反発の声があるとも聞く。経営刷新の過程で摩擦が生じるのは仕方がないと思う。それを乗り越えられるかも引き続き見ていく必要がある。

 沖田 新生オリオンに以前よりも勢いを感じるのも事実だ。沖縄を代表するブランドとしてさらに成長してほしい。

全国47都道府県で唯一店舗がなかった沖縄に、ついに初出店を果たしたセブン―イレブン。開店初日のテープカットに古屋一樹セブン―イレブン・ジャパン会長(右端)も参加=7月11日、那覇市松山

 平安 サンエー浦添西海岸パルコシティの開業やセブン―イレブンの沖縄進出があり、沖縄の商業環境は大きく変わった。

 外間 セブンは5年で250店舗を出店する計画だ。ファミリーマートとローソンはセブンがどこに店舗を出すか神経をとがらせている。

 石井 セブンが進出する前、既存コンビニのオーナーを取材した。当初、セブンの進出を懸念する声を聞けると思ったが、実際はそれ以前にぎりぎりのところで営業を維持している、深刻な働き方の問題があると知った。慢性的な人手不足の中で、コンビニの24時間営業の限界が浮き彫りになった年だった。

6月に開業を迎えたショッピングモール「サンエー浦添西海岸パルコシティ」。小売業界は競争激化と人手不足に拍車が掛かっている=6月27日、浦添市西洲(小型無人機で撮影)

 平安 消費増税は県民生活にも影響した。

 沖田 今回の増税は軽減税率やキャッシュレス・消費者還元事業など、前例のない複数の制度が一斉に始まったので混乱した。今でも税制の詳細をよく分かっていない人も多いと思う。複雑にすることで増税への批判から目をそらされたような気もする。キャッシュレス還元制度の導入で消費の冷え込みを抑えられるという指摘もあるが、制度終了後にどうなるか見通せない。