「大東に帰りたい…」 最期を住み慣れた環境で迎えるために地域住民にできること


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 【南大東】南大東村福祉民生課は、島でのみとりを考えるシンポジウム「最期まで自分らしく生きる~よりよい人生の終わり方を考える~」を21日、村多目的交流センターで開いた。村や本島、池間島でのみとりの現状を報告。医療や福祉サービスが限られた島で本人の希望に寄り添って最期を過ごすには「地域住民の理解と協力が重要」と地域の支援の大切さを語った。村民ら約50人が熱心に耳を傾けた。

住み慣れた島での最期について意見を交わしたシンポジウム=21日、南大東村多目的交流センター

 第1部は県立中部病院感染症内科・地域ケア科の医師・髙山義浩さんが基調講演した。独居高齢者の自宅のテレビアンテナを直した経験を語り「気付いた人が動く。近隣住民、親戚、役場など縦割りでなく、みんなで一つのチームになってできる範囲で支援する緩やかなネットワークができれば、高齢者が地域で安心して暮らしていける」と強調した。医師の数が限られていることから、介護者の教育プログラムにも取り組んでいることを紹介した。

 第2部は南大東と池間島の取り組みを報告した後、髙山さんと村副村長の新垣利治さんも加わり質疑応答に答えた。南大東診療所所長の山本恭資さんがコーディネーターを務めた。

 村福祉民生課の生活支援コーディネーターの山田千鶴子さんは、介護や福祉サービスが限られている現状を挙げ「本島の施設や病院にいる人から『大東に帰りたい』という声を聞くと胸が痛む」と強調。「帰りたくても帰れない人も多いが、地域住民の理解とちょっとした声掛けや手伝い、医療・介護・福祉の連携、家族の支援があれば島で最期を迎えることも可能」と話した。子どもたちにも福祉や介護に関心を持ってもらい、島で活躍できる人材育成の必要性も語った。

熱心に耳を傾ける住民ら

 村社会福祉協議会の仲地ゆかりさんは、社協のショートステイを利用しながら最期を迎えた人や本島での最期を希望した人など五つのケースを紹介。「『みとり』と言っても全て一緒ではない。今後は『島で、住み慣れた環境で』と希望する人が多くなっていくと思う。医療・介護を充実させ、本人や家族の負担を軽減できる環境づくりが課題だ」と話した。

 質疑応答で「島で最期を希望する人が増えたら対応できるのか」との質問が出た。髙山さんは南大東での死亡者を年間12~13人とし「年間13~15人を目標に態勢が取れればいい」と語り、将来的には介護の現場に外国人材も入れる議論も必要とした。NPO法人いけま福祉支援センターの坂東瑠美さんは「最期は積極的な医療ケアよりもみんなで思い出を語り合いながら過ごす。島の人たちも気になって様子を見に行く。どれだけその人を思えるかが専門職やサービスよりも大切」と住民のサポートの重要性を語った。

(豊浜由紀子)
 

「島で最期を」 50%以上希望

 南大東村の2019年11月末現在の人口は1261人、65歳以上は310人。介護認定を受けている人は55人(要介護45人、要支援10人)。村診療所は医師1人、看護師1人体制。

 村社会福祉協議会がデイサービス(定員20人)とショートステイを実施している。ショートステイは介護者の負担軽減や、冠婚葬祭などで介護者が島を離れる際に利用するという。村社協は15年、40代以上の541人に「最期をどこで迎えたいか」についてアンケートを実施し、50%以上が「住み慣れた島」を希望した。