中央政府、強硬な態度 独立賛成 地元政党のみ 識者「再び住民投票を」<民の思い背に 自己決定権の道標>③


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「政府とはもう一度、住民投票することを交渉すべきだ」と語るジャウマ・ロペス教授=バルセロナのポンペオ・ファブラ大学

 スペイン国政は2018年の総選挙で、相次ぐ汚職事件によって支持率が低下していた国民党から社会労働党に政権交代した。19年4月の総選挙でも社会労働党が第1党となったが連立交渉が不調に終わり、11月に再選挙となった。現在、下院(定数350)のうち社会労働党は120議席で第1党だが半数は下回る。35議席の急進左派ポデモスと連立に合意したものの、半数には届いていない。

 そこで存在感を増しているのが、カタルーニャ自治州の自治権拡大を要求してきたカタルーニャ共和左派(ERC)だ。13議席を持つERCが政権に賛同すれば、議案などを成立させることが容易になる。

 今年1月2日、ERCは社会労働党のペドロ・サンチェス首相の信任に事実上、同意することを決めた。カタルーニャ州の独立に反対している社会労働党との連立政権に加わることはできないが、首相信任に道を開くことと引き換えに「新政権がカタルーニャ州の独立問題の民主的解決に向けた協議を州側と行う」ことを認めさせた。

 スペイン国会でカタルーニャ独立に賛成するのは、ERCなどカタルーニャの政党だけだ。ポデモスは住民投票の実施には賛意を示したものの、政権を担ってきた社会労働党や国民党は独立に明確に反対してきた。そのことを背景に2年前の住民投票時だけでなく、昨年10月の最高裁判決後のデモに対しても政府は強硬な態度を取り続ける。

 全国的にはカタルーニャから自治権を剥奪(はくだつ)することなどを求める強硬論も根強く、その中で極右政党のVOX(ボックス)が昨年11月の総選挙で52議席を得て第3党に躍進した。

 中央政府との向き合い方について、バルセロナにあるポンペオ・ファブラ大学のジャウマ・ロペス教授(政治学)は「政府とは独立についてではなく、もう一度住民投票を実施することを交渉すべきだ」と指摘する。

 2年前の住民投票の投票率が、国家警察の妨害によって4割にとどまったことを挙げる。「スコットランドのようなきちんとした住民投票で民意を明確にすべきだ。すぐにではなく数年の期間をおけば、政府も独立反対のキャンペーンを打てる。反対が多数となる可能性もある」と話す。投票者数ではなく、有権者の過半数の賛否を明らかにする必要性を指摘し「その上で50%を1%でも上回れば政府は独立を認めるべきだ」と語った。

(宮城隆尋)


 スペイン北東部カタルーニャ自治州で、自己決定権回復を求める運動が転換点を迎えている。沖縄と共通する課題を抱える人々の現在を取材した。