豚コレラ感染、県の水際対策かなわず 異変後も出荷続け、拡大の恐れも…


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 県外で被害が拡大していた豚コレラ(CSF)は、海を越えて沖縄で感染が確認された。県外のようにイノシシの移動による感染が考えにくい県内での発生に、関係者は驚きを隠さない。豚コレラの発生が確認された養豚場では、豚の異変に気付いてから県に報告するまで時間がかかっており、感染地域の拡大も懸念される。県は引き続き調査を進め、感染ルートの確認などを急ぐ。

豚コレラの患畜確認を受けて開かれた対策会議=8日午前9時7分ごろ、県庁(喜瀬守昭撮影)

 「今までとはかなり違う事態だ」。うるま市の養豚場で豚コレラの発生が確認された8日午前。農林水産省で開かれた会議の冒頭、江藤拓農相は緊張した面持ちで危機感を示した。

■沖縄へ飛び火

 豚コレラは関東、中部、関西の1府8県で発生が確認され、主に野生のイノシシが媒介していると見られている。農水省は昨年9月に従来の慎重姿勢を転換。豚肉の輸出などへの影響も懸念されるワクチン接種の実施を決めた。豚コレラの発生が確認された県のみならず、未確認の隣接地域でもワクチンの散布を行うなど“ウイルス包囲網”の形成を対策の根幹に位置付けた。

 県外での豚コレラ発生を受けて、県内でも畜産業者らに注意喚起し、空港や港湾の水際対策を強化してきた。そんな中、沖縄で豚コレラが発生した。防疫体制の見直しにもつながりかねない事態を受け、急きょ沖縄へ向かった江藤大臣は「(水際対策は)完璧を目指さないと行けないが、100%やることは難しい」と胸の内を明かした。

 多くの外国人観光客が訪れる沖縄では、有効なワクチンがなく致死率が高いアフリカ豚コレラ(ASF)が侵入するリスクもある。養豚業を守るため、国は水際対策をさらに強化する考えだ。

■被害拡大も

 豚コレラの発生が確認された養豚場によると、昨年11月下旬から豚の元気がなくなるなど、通常と異なる様子が確認された。獣医師と相談しながら治療を続けたが、12月20日から1月6日までに数十頭が死ぬなど状況が悪化した。一方、12月26日までは週1回のペースで食肉センターへの出荷を続けていた。

 豚に異変が出始めた後も出荷は続けられており、豚コレラ発生が確認された養豚場以外にも被害が広がる可能性は否定できない。8日時点で、発生場所以外で異常のある豚は見つかっていないという。県の担当者は「今後も調査を進めて、豚に異常があった場合に連絡してもらうよう体制を整える必要がある」と厳しい表情を見せる。

 現時点では県内へ豚コレラウイルスが侵入した経路も不明で、県は関係機関と連携して原因究明を強化する考えだ。

(知念征尚、平安太一)