国際社会へ少数意見の尊重訴え 重なる沖縄の基地問題<民の思い背に 自己決定権の道標>④


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「マイノリティーが尊重されないものを民主主義と呼んではならない」と語るANCのジョルジ・ビラノバ理事=カタルーニャ自治州バルセロナ

 「対立関係は対話によって解決していかねばならない」。カタルーニャ自治州のカルラス・プチデモン前州首相は琉球新報の取材に「独立の問題はスペインの国内問題にとどまらない。欧州連合(EU)を巻き込むことで、この対立を国際化することが重要だ」と語った。

 カタルーニャへの批判的な見方が多数を占める国内世論を背景に、スペイン中央政府は強硬な態度を取り続ける。その中でカタルーニャ州政府や市民団体などはEU、国連など国際社会への働き掛けを強める。

 2017年10月の住民投票で中央政府が送り込んだ国家警察が市民に暴力を振るい、投票を妨害した。中央政府は「投票は違憲だ」として州政府の自治権を停止した。州首相だったプチデモン氏はEUに仲裁を働き掛けたが、当時EUは関与しなかった。「内政干渉」と指摘されることを避けたとみられる。

 一方で昨年12月19日、EU司法裁判所はカタルーニャのオリオール・ジュンケラス前副首相について、昨年5月の欧州議会議員選での当選を有効と判断し、身柄の拘束をやめるようスペイン政府に求めた。ジュンケラス氏は扇動罪などでスペイン最高裁から禁錮13年の判決を受けている。ジュンケラス氏への判断は事実上、同時に当選したプチデモン氏も認めたことになる。欧州議会はプチデモン氏に暫定的な議員資格を認定した。

 政府との対立で国際社会に活路を求めたのは、沖縄も同じだ。翁長雄志前知事は2015年9月、在日米軍基地が沖縄に集中していることや名護市辺野古の新基地建設が強行されていることについて、国連人権理事会で「沖縄の人々の自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えた。

 日本政府を「自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのか」と批判した。

 少数派の意見が無視される状況について、カタルーニャ国民会議(ANC)のジョルジ・ビラノバ理事は「カタルーニャの意見が尊重されないのは人権の問題だ。同じように沖縄で米軍が特権を持っていることも人権問題だ」と語る。多数派と少数派の不平等性について指摘した上で「マイノリティーが尊重されないものを民主主義と呼んではならない」と強調した。

(宮城隆尋)


 スペイン北東部カタルーニャ自治州で、自己決定権回復を求める運動が転換点を迎えている。沖縄と共通する課題を抱える人々の現在を取材した。