変死から2週間後の報告…年末年始は休みだと思った…緊急時通報体制の周知不徹底 豚コレラ拡大


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 沖縄県内で1986年以来の発生が確認された豚コレラは、うるま市に続き沖縄市にも感染が広がった。殺処分は両市の養豚場で合わせて4810頭までふくれあがった。最初に感染を確認した養豚場からの被害拡大が懸念される中、県は家畜検査の区域を広げることを決定。今後は豚コレラのワクチン接種についても検討が進められる。

 うるま市の養豚場で8日に感染が確認された豚コレラは10日、沖縄市の養豚場に広がり、殺処分対象の豚は計約5千頭となった。県や関係機関は24時間体制で殺処分や埋却など防疫措置を進めるが、豚が変死してから通報までに2週間程度が経過していることもあり、ウイルスの拡散を封じ込められるかは未知数だ。

 最初に感染が確認されたのはうるま市の養豚場だった。経営者の男性が、異変に気がついたのは2019年の11月後半。ぐったりとした様子の豚がぽつぽつと現れた。当初はかぜや肺炎を疑い、獣医師に相談して注射を打ったが症状は改善しなかった。治療を続けていたが、12月20日ごろから変死する豚も出始めた。それでも「大丈夫だと思った」と26日に25頭を出荷。豚コレラにかかるわけがないという思いと、年末年始で県家畜保健衛生所が休みだという思い込みから「(通報を)遠慮してしまった」。

 行政への通報は年が明けて仕事始めの1月6日になった。変死した豚は既に約30頭に上っていた。

 豚コレラウイルスは伝染力が強く、早期に全頭の殺処分など徹底した防疫措置が必要となる。今回は通報までに時間がかかっているため、県が把握した時点でウイルスが広がっていた可能性も指摘されている。10日には、最初に感染が確認された養豚場から約1・6キロ離れた沖縄市内の養豚場でも感染が確認された。

 通報の遅れは感染拡大に直結しかねないことから、男性の対応には批判的な声が多い。江藤拓農相は10日の会見で「昨年のうちに変死が確認されていたのに報告が遅れたのは大変遺憾だ」と指摘した。

 家畜保健衛生所は24時間365日、家畜の異常などの通報を受け付けていて、休日や夜間でも固定電話から担当者の携帯電話に転送される。今回、現場の農家がそれを知らなかったことも通報の遅れにつながったと指摘されている。

 豚コレラの県内発生を防ぐため養豚農家に防疫作業を指導していたはずの県だが、家畜保健衛生所の24時間体制が末端に行き届いてない不備が浮き彫りとなった。畜産課の職員は「何度も伝えたつもりではあったが、隅々まで周知するのは難しい」と語った。