なぜ沖縄で豚コレラ感染が拡大しているのか? 山積する課題とは


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 県内での豚コレラ(CSF)感染が拡大を続けている。8日にうるま市で発生が確認されて以降、10日は沖縄市で新たに1養豚場、11日は同市でさらに2養豚場で殺処分が決まり、殺処分の合計は6600頭を超えた。離島県沖縄では養豚農家の距離が近く、交配や肥育のため豚を施設間で行き来させたり、同じ飼料業者や堆肥業者が各農家に出入りしたりすることもあり、感染の拡大につながっている可能性がある。

新たに豚コレラ感染が見つかった豚舎へ入る防護服を着た作業員ら(手前側)=10日午後、沖縄市(小型無人機で撮影)

 豚コレラの発生が広がる中、県内の養豚関係者からはまだ感染していない豚への被害拡大を防ぐため、ワクチン接種を求める声が強まっている。

■県は慎重姿勢

 一方で、ワクチンを接種することで海外への輸出禁止が長期化するなど産業に与える経済的なデメリットもあり、県は慎重姿勢をとっている。県幹部は「ワクチンを打つと特にアグーなどは香港などに出せなくなる。今は現場の封じ込めを一生懸命やっている。何とかそこで食い止めたい」と説明する。

 最初に感染が確認されたうるま市の養豚場から3キロ圏内にある養豚場の家畜検査で、10日に沖縄市の農場で陽性反応が出た。うるま市の養豚場と直接的な人や物の移動が見られず、ウイルスが発生農場以外にも広がっていたことが明らかとなった。

 県は10キロ圏内に家畜検査の範囲を広げて、さらなる感染がないかを確認する。その圏内で感染が確認されず、3キロ圏内に抑えられていると判断できればワクチン接種を回避できるのではないかという考えがある。

 11日に沖縄市の別の養豚場でも感染が確認された。これはうるま市の3キロ圏内の外にある。しかし、うるま市の農場と同じ事業者が運営しているため、うるま市で発生した事例の関連施設として、10キロ圏内での新たな発生とは捉えてない。

■指導の不徹底

 県は生産者の意見も聞きながらワクチン接種の必要性や効果的な活用のタイミングを検討しているとするが、新たな発生や防疫作業に追われており、ワクチン接種を巡る意見集約が進んでいる様子はない。

 また、3キロ圏内には12件の養豚場があったが、10キロ圏内には養豚場が51カ所ある。検査の動向を見ながらワクチン導入の可否を判断するというが、検査が全て完了するまでに長期間を要する可能性もある。

 沖縄市への感染拡大では、殺処分した豚の死骸を埋める埋却地がないという大きな課題に直面している。うるま市で最初に感染が見つかった養豚農家では、年末から豚の不審死がありながら、県の家畜保健衛生所が365日対応ということを知らずに、県の仕事始めまで通報していなかったという通報の遅れがあった。

 末端の農家まで指導が不徹底だったことなど事前の防疫対策の不備が露見し、次々と新たな発生が確認される中、県の対応が後手に回っている印象はぬぐえない。

(外間愛也)