【記者解説】沖縄県の事前対策に不備 埋却地の確保、農家任せに疑問も


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 県内で市境を越えて豚コレラの感染が広がる中、殺処分した豚の死骸を埋める埋却地の確保が難航している。県は迅速な初動防疫に努めるとしているが、今後も殺処分の頭数が増えるようならば、埋却地不足は防疫体制のネックとなる。

 豚コレラ発生後の初動防疫は原則として24時間以内に殺処分を終え、72時間以内で埋却・消毒まで完了させることになっている。

 10日に感染が確認された沖縄市の農場では飼養する2785頭全てが殺処分の対象になったが、埋却地が決まらずに殺処分に取りかかれない状況に陥った。11日までに殺処分は始まったが、埋却場所が決まらないまま見切り発車だ。

 埋却地の確保について県畜産課は「家畜防疫指針で、家畜の所有者は埋却可能な土地の確保について努力をする義務付けがある」と説明する。これに対し、県養豚振興協議会の稲嶺盛三会長は「農家は狭い土地の中で工夫して豚を飼育している。埋却地を用意できる農家はほとんどいない」と農家任せの対応に疑問を呈する。

殺処分された豚の埋却作業が終了し、埋め戻された市有地=11日午前9時50分ごろ、うるま市(小型無人機で撮影)

 離島県の沖縄では大規模経営の農場は限られ、周辺の市街化で規模を広げられないといった畜産業の形成過程がある。農家だけで埋却可能な用地を確保することは容易ではない。

 沖縄市内での感染発生を受け、県は市に埋却地の確保を要請しているが、市有地など公有地で適地がなければ民間地権者との調整が必要になる。

 地価が高騰を見せるほど土地が不足している状況で、埋却後に利用が制限される土地の提供に難色は強いだろう。市全体の都市化が進み、周辺住民との調整にも時間がかかる。

 牛の伝染病である口蹄疫を経験した宮崎県の都農町は、同様に埋却地探しに難航する中、国に代わり複数農場の家畜を同じ場所に埋める「共同埋却」を実施。限られた土地を有効に活用し、効率的に埋却作業に取り組んだ。

 県として発生時の課題を洗い出し、他府県の事例も参考に対策方針を検討しておく必要があった。事前の備えについて課題を露呈している。

(石井恵理菜)