「持続可能な観光」重点に 次期振計骨子案策定へ 富川副知事ら環境保全策で欧州視察


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カリアリ市のトラッツィ市長(中央)らと意見交換する富川盛武副知事(右)=2019年11月18日、イタリア・サルデーニャ州のカリアリ市庁舎(県提供)

 2022年度以降の新たな沖縄振興計画策定に向け、富川盛武副知事は、計画の骨子案に環境保全と観光の両立を目指す“持続可能な観光”などの理念を盛り込む方針だ。新たな計画の全体構想を練る富川副知事率いる新沖縄発展戦略プロジェクトチームは、昨年11月にイタリアとオランダを視察し、構想のヒントを得た。「10年先を見据えて要素を盛り込みたい」という骨子案は、今夏ごろまでにまとまる予定だ。

 新沖縄発展戦略プロジェクトチームは、昨年11月中旬、イタリアのサルデーニャ州とオランダのロッテルダム市を視察した。イタリア半島の西に浮かぶサルデーニャ島には、年間1500万人の観光客が夏季の4カ月に集中する。期間限定だが沖縄と同様、オーバーツーリズムが生じている。

 富川副知事が「大変参考になった」と話すのがカリアリ大学の「持続可能な観光地経営のための指標システム」だ。同システムは、経済指標に加え、環境負荷も考慮した環境指標を組み合わせ、持続可能な観光地経営を目指すためのものだ。同大は13年に地元自治体と共同で法人を設立し、同システムによるデータを収集し分析している。

 富川副知事は県の観光評価は入域観光客数など経済指標だけだとし「10年先、20年先を見据えた取り組みが非常に参考になった。環境に負荷を与えず、住民の理解も得ながらバランスのとれた観光の在り方を目指したい」と語った。

 続いて訪れた白い砂浜が人気の高い人口約3千人のヴィッラシミウス市は、海を守ることと持続可能な観光をポリシーとする。独自に海洋保護区域を設定し、水泳や潜水を規制。さらに「ゾーニング規制」で海岸線から500メートル以内はホテルなどの建築を禁止、2キロ以内は住宅などの建築を禁止しているという。

世界最大の花市場、オランダのアールスメール花市場=11月20日、アムステルダム郊外の北ホラント州アールスメール(県提供)

 調査チームの一員として同行したニュー・パブリック・ワークス代表理事の上妻毅氏は「規模は小さいが学ぶべき点が大きかった」と評価した上で「沖縄の海岸線は、相当規模の土地所有権が県外にわたり、開発圧力も増大することが見込まれる中、制度面の保全措置は不十分だ」と指摘した。

 視察団はこのほか、サルデーニャ州政府でケッサ観光担当相らと面会し、オフシーズン対策について説明を受けた。具体的には、これまで認知されてこなかった遺跡や祭り、食、スポーツイベントなど“体験型ツーリズム”を積極的に促進しているという。

 最後に欧州の最先端の物流拠点であるオランダのロッテルダム港や世界最大の花市場を訪問した。港湾局は04年、株式会社化され、市が約70%、政府が約30%の株式を保有。情報通信技術による港湾経営の最適化が進んでいる状況などを聴き取った。空港港湾の充実も新たな沖縄振興計画の重要な要素となる。